MACHIGAKU REPORT まちがくレポート

【特別企画】
こおりやま街の学校presents 「まちのあれこれ談話室」

2021.11.27

 

 

これまでの「まちがく」とはひと味異なるスペシャルな企画を開催!その名も「こおりやま街の学校presents まちのあれこれ談話室」。全国各地で地域づくりの最前線に関わる著名なゲストが郡山に集結し、SDGs・エリアリノベーション・コミュニティデザインの観点から〈郡山〉についてあれこれお話いただきました。この日の会場は、なんと屋外!郡山市にある開成山公園「野外音楽堂」にこたつが登場し、昭和レトロな雰囲気のなか、ほっとなトークが盛り上がりました。

 

○講師プロフィール

山崎 亮 氏

studio-L代表/関西学院大学建築学部教授

コミュニティデザイナー/社会福祉士

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』、『地域ごはん日記(パイインターナショナル)』、『ケアするまちのデザイン(医学書院)』などがある。

 

馬場 正尊 氏

オープン・エー代表取締役/建築家/東北芸術工科大学教授

1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年OpenAを設立。建築設計、都市計画、執筆などを行い、同時期に「東京R不動産」を始める。近作は「Under Construction」(2016)「なごのキャンパス」(2019)など。近著に『民間主導・行政支援の公民連携の教科書』(学芸出版 2019 共著)、『テンポラリーアーキテクチャー:仮設建築と社会実験』(学芸出版 2020 共著)など。

 

指出 一正 氏

こおりやま街の学校 学校長

株式会社ソトコト・プラネット 代表取締役

未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」編集長

 

雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師。静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師等多数活躍。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。

 

ワクワクするまちって、どんなまち?

 

指出学校長:今日は「こおりやま街の学校」のスペシャルバージョンです。学校長と務めさせていただいている僕と、「オープン・エー」代表の馬場さん、「studio-L」代表の山崎さんと一緒に、まちのあれこれについて話していきたいと思います。じゃあ、久しぶりにお二人とリアルで会ったので、お二人が最近やってることを含めて、かるく自己紹介をお願いできますか?

 

馬場さん:こんにちは、馬場です。よろしくお願いします。僕は東京をベースに「オープン・エー」という設計事務所や、「R不動産」をやっています。山形県にある東北芸術工科大学で先生もしていまして、同時にいろんなまちの仕事をやっています。だから、東京から山形へ行くときに郡山も通るんですけど、訪れたのは初めてですね。最近は設計を中心にしながら、公園の民間活用の仕事が増えています。そのほか廃校のリノベーションの設計や、その先の運営にもタッチしていて、設計デザインだけでなく運営・マネジメントなどのソフト面にも携わるようになりました。

 

 

山崎さん:「studio-L」の山崎です。よろしくお願いします。今日は大阪からやってきました。何年か前は、東北芸術工科大学で授業をしていたので東北に通っていたのですが、今は関西学院大学という兵庫県にある大学に移りまして、東北との距離が遠くなってしまいました。本務は大阪に本社がある「studio-L」という会社で、コミュニティデザインの仕事をしています。僕ももともと空間デザインをやっていたんですが、場の運営に関わることが多くなってきています。地域の方とワークショップを開いて、この場所をどう利活用していくのかといったことをやっています。

 

 

指出学校長:ありがとうございます。今日はお二人に、まちに関する質問をいくつ用意してきたので、聞いていきたいと思います。じゃあ最初に、まちがワクワクしていくためには、どんなものが必要だと思いますか?

 

馬場さん:そのまちに行ったときに、ワクワクする人と出会えるかどうか。まずそれが大きいかもしれないなあ。どんな人とどういう会話をしたかって、そのまちの印象に大きく影響すると思うんです。それとまちの風景も見るし、この古い物件リノベーションしたらかっこよくなりそうだなって考えたりもするけど。最終的に一番フォーカスするのは、このまちにどんなプレーヤーがいるか。会って話してワクワクする人がいるかどうかが、大事だと思います。

 

山崎さん:僕も人だと思いますね。例えば、まちがワクワクしているのってどんな状態かと聞かれたら、そのまちに住んでいる人がワクワクしている状態なんじゃないかと思います。でもその場合、まちに住んでいる人が、何にワクワクしているのかが問われてくる気がするんですよ。僕は楽しさをお金で買うというのは、いかがなものかとよく話すんですけどね。高い車を買ったり、ブランド品のバッグを買ったりしてワクワクすることも、このまちに住む人がワクワクしていることに違いない。でも、なんかそれで本当にワクワクしてるって言える?とか、そのワクワクにどれだけの価値があるか?と考えたときに、どうなんでしょうね。僕がそういった人たちと関わるなかで、その人たちのワクワクの対象物が変わっていく場面を目の当たりにしたときに、僕自身もめちゃくちゃワクワクします。

 

 

視点が、内向きから外向きへ変わっていく。

 

指出学校長:今、僕は奈良でスナックのマスターをやってるんですよ。まちに少しでもワクワクするものがあれば、まちに住む人もワクワクできるかなと思ってやってるんですけど。こんなふうに、まちをワクワクさせるための仕掛けっていろいろあると思います。例えば、リノベーションプロジェクトとか、コミュニティデザインのプロジェクトとか。今、いろんな場所でローカルプロジェクトが花開いていますよね。ローカルプロジェクトの変化を感じることや、動向についてお二人に聞きたいと思います。

 

山崎さん:これまでの地域活性化のプロジェクトって、地域の人たちがどう思ってるか分からないけど、こんな建物を建てたりお店をつくったりしたら、地域の人に喜んでもらえるんじゃないかと思ってやっていましたよね。そのあと、そうではないんじゃないかと、地元に住んでいる人たち自身にフォーカスして、こんなおもしろい地元民がいるよって発信したり、地元の人たちがやりたいことを実現していく段階になっていると思います。さらに最近は、地元の人たちが学んで考え方を変えて、そこから新しいプロジェクトが生まれている気がします。

 

 

山崎さん:だからさっきの「何にワクワクしているのか」という話に戻ると、まちがくのようなプロジェクトを通して学んでいるうちに、その人にとってワクワクしているものが少しずつ変わってくるということが、結構大切な気がするんですよね。その人自身が変わっていくプロセスが練り込まれているローカルプロジェクトが、増えていると思います。

 

馬場さん:僕も同じ感覚がありますね。例えばリノベーションスクールとかもそうかもしれないけど、学校という名前なんだけど、何かを学ぶのが目的というよりも、そこに集う人たちとプロジェクトを立ち上げて動かすために、ノウハウを学ぶ。そういったスクールになっているんじゃないかなと思いますね。あと最近思うのは、今までのローカルプロジェクトって、地域の人たちが自分たちだけで盛り上がるというようプロジェクトが多かったと思うんですけど。でもそれって、どっちかと言うと内向きで。産業というと言い過ぎかもしれないけど、商品とかをつくったりして、外部に訴えかけようとか、外貨を稼ごうとか、おもしろい人をさらに呼び込もうとか。他のエリアや他者との流通みたいなものを意識的にやろうとしている人が増えている気がします。

 

 

ローカルプロジェクトをやる意味って?

 

指出学校長:ありがとうございます。お二人の話のなかで、ローカルプロジェクトがちゃんと成長していっているというのが感じられました。じゃあ、お二人が見ていて、うまく進んでいるなと思うローカルプロジェクトと、進みづらいなというローカルプロジェクトの違いって何ですか?

 

山崎さん:僕の場合はプロジェクトの速度だと思いますね。素早く結果を出すよりも、まだ進んでないの?まだその段階?って思えるスピード感のほうが、安心して見ていられます。それは誰かが応援してくれていたり、誰かが時間をかけてしぶとくやっているという証拠だったりしますから。だから僕が地域を訪れたときには、プロジェクトの速度について質問しますね。

 

馬場さん:おもしろいですね。僕はちょっとずつ新しい登場人物が生まれ続けている状況がいい気がする。例えば、まちに新しい拠点ができて、メインキャストが決まったとして、そのメインキャストだけがずーっと盛り上がり続けると、最初はスピード感があるかもしれないけど…。新しい世代の人が増え続けて、じわじわと盛り上がっていくほうがいいんじゃないですかね。

 

 

指出学校長:いろんなプロジェクトがありますけど、そもそもプロジェクトって何のためにやると思いますか。お二人にとってプロジェクトを行うことの意味や目的って何でしょうか?

 

山崎さん:僕は、プロジェクトに関わっている人の人生を豊かにすることだと思いますね。19世紀の思想家のジョン・ラスキンという人が書いた本のなかに「人生こそが財産である」っていう言葉があるんですね。人生のなかには、人を褒めてやる気にさせる力もあるし、人を愛する力もある。いろんな力を持っているんだから、人生という資産を活用しましょうというのが、ジョン・ラスキンの考え方なんですけども。じゃあ豊かな人生ってどんなものかと聞かれると、人生という資産を活用した人なんですね。自分が持っている資産や力を使って、他者にいい影響を与え続けた人が、豊かな人生と言えるのではないかと思います。

 

 

山崎さん:だから豊かな地域って何と聞かれたら、そういった豊かな人生を歩んでいる人たちが集まっている地域のことだと思うんです。プロジェクトをやるなら、その人の人生が豊かになるものにしたい。自分が楽しいっていうのも大事だけど、自分の持ってる力で誰かのためになることをやって、充実感を得るというのも大事。そのために、プロジェクトっていい器なんですよね。プロジェクトって、自分の人生が生かせるんですよ。自分のやったことで地域の人に喜んでもらえたり、10年後には地域の知名度がちょっと上がったりするかもしれない。そうなれば、自分もちょっとうれしいし。

 

馬場さん:僕もほとんど一緒ですね。「人生を楽しくするため」だと思います。高杉晋作の辞世の句で、「おもしろきこともなき世をおもしろく」ってありますよね。僕すごく好きなんですけど。彼らも世の中や政治を変えたいっていう想いはあったんだろうけども、その前に「新しいことやってやる!」というような、感情のドリブンがあったと思うんですよね。それが着火点にないと、その先の理想にいけないような気がする。僕も本とか書いてますけど、着火点には「見たことない景色を見てみたい!」っていう感情がベースにある気がしますね。ローカルプロジェクトは、人生をより楽しくするためのいい言い訳だと思います(笑)。

 

 

山崎さん:この土地で長州の話をするときは、ちょっと気をつけたほうがいいんじゃないかとも思ったりしますけど(笑)。でも楽しさがプロジェクトをドリブンさせるっていうのは、ありますよね。論語のなかに「楽しさはそのなかにある」っていう言葉があって、貧しくて苦しい生活のなかにも、楽しさはあるという意味なんですけど。ですから、楽しさを見つける力も大切でしょうね。でも、楽しさを見出せない人も中にはいて、それをどうしたらいいかと、我々のプロジェクトのテーマにもなっています。最初にも話したんですけど、例えば高い車を買ったり、いいサービスが受けられたりと、お金を払えば自分を楽しませてもらえるものに楽しさを感じている人は、その楽しさをお金で買うためにずっと働き続けなきゃいけない。馬場さんのいう楽しさとは、別の楽しさですよね。だから、本当は別のところにも楽しさってあるんじゃないか?という視点を持つ必要があるなと思います。

 

指出学校長:僕が編集長をやっている『ソトコト』に登場されているみなさんは、ローカルプロジェクトをやっている方がほとんどなんですけど。馬場さんと山崎さんが表現されたような方ばかりが載っています。「自分が楽しいからやっている」という人たちですね。そんな人たちの予測不能なプロジェクトがソトコトには載りやすいので、ぜひみなさんもローカルプロジェクトをやってください(笑)。

 

 

プロジェクトは、自分ではじめなくてもいい。

 

指出学校長:この話、みなさんも気になると思うんですけど…山崎さんと馬場さんはどうやってプロジェクトをおこしていくんですか?どうやってひらめくんですか?

 

山崎さん:実はコミュニティデザイナーって、あまりひらめかないんですよ。僕たちが何かひらめいて、「こうすれば郡山は良くなると思いますよ」って言っちゃうと、その話を聞いた人たちはそのとおりにやってみちゃうんですね。これだと僕らの仕事にはならない。地域の人たち自身でプロジェクトをやっていくためのお手伝いをするのが僕らの仕事ですから、そういう意味ではあまりひらめきはないかな。正直に言うと、ひらめきがあっても隠さないといけない。みんなを魅了するアイデアであればあるほど、言ってはいけないと思います。それを地域の人に言ってもらわないと意味がないと思うので。僕らは責任をとらないことが大事。なるべく地域の人たち自身にちいさな責任を持ってもらって、「私たちが言ったんだから私たちでやり遂げねばならない」という粘着力のようなものをそれぞれの人たちに持ってもらうことが必要なんです。でも馬場さんはご自身で事業をされていたりするから、その点ではひらめきは大事じゃないんですか?

 

馬場さん:意外かもしれないけど、結構受け身なんですよ。

 

山崎さん:まじで?

 

馬場さん:巻き込まれていくタイプなんですよ。

 

山崎さん:じゃあ、一緒じゃない。

 

 

馬場さん:あまり能動的に「よし、思いついた!これやろうぜ!」って言ったこともないし、やったとしても、まあ似合わない。だからリーダータイプではないんですよ。誰かが思いついたことを、気づけば一緒になってやってる感じ。そのスタートダッシュを自ら牽引したことがないし、やろうとするとだいたいコケる(笑)。ゼロからイチを生み出すのもあまり得意ではなく、そうやって流れに乗っているうちに自分ごと化して調子良くなってきて、そうすると「楽しいからみんなどう?」って周りを巻き込んでプロジェクト化していくタイプですかね。でも、そういうときにも頼まないし。「どう?」って聞いて、「楽しそうだからやりたい」って言ってもらったら一緒にやろうって。

 

指出学校長:さっき、山崎さんも馬場さんも、みなさんに大きな投げかけをしていました。自分たちのローカルプロジェクトのはじめ方、ヒントになるようなものですね。ちなみに実は、僕も巻き込まれタイプなんですよ。今年は「ナレーター」とか「キュレーター」とか、「〇〇ター」の仕事をやりたいと思っていたら、山形の「ライク・ア・バードokitama」という映像プロジェクトでナレーターをやってくれないかと頼まれて。You Tubeもあるのでぜひ見てみてください。それで気をよくしていたら、芸術祭のキュレーターの依頼をいただいて。そうやってどんどんプロジェクトに巻き込まれていって。だから僕も、巻き込まれタイプの一人です。

 

山崎さん:じゃあ3人とも巻き込まれる人なんですね。

 

指出学校長:その証拠に、僕たち3人は、このこたつセットを考えた首謀者の方々に巻き込まれていますからね(笑)。これは我々のアイデアではありません。

 

とことん昭和レトロにこだわったステージ小物。そのほとんどが、事務局関係者の私物!

とことん昭和レトロにこだわったステージ小物。そのほとんどが、事務局関係者の私物!

 

仲間をつくる、誰かと一緒にやる。

 

指出学校長:仲間という話が出たので聞いてみたいんですが。地域やまちで何かやりたいなと思ったときに、どうやって仲間をつくればいいんでしょうか?

 

馬場さん:僕はまず、強引に誘わない。やわらかいつながりを大切にする。あまり結束しすぎると拘束になっちゃうから、僕も自由じゃなくなるし巻き込まれた人も自由じゃなくなるかもしれない。プロジェクトの最初は、入ってきても入ってこなくてもいいくらいの関係ではじめてる気がします。例えば、東京R不動産も5人ではじめたんですが、会社にしたのは8年くらい経ってから。それに、プロジェクトをやるときは、他者に多くを求めすぎない。常に自分がちょっと働きすぎで、ちょっと損してるくらいが一番いいと思います。

 

 

山崎さん:それすごく分かるんですよ。僕も趣味でYou Tubeやってるんですけど、こないだ「You Tubeでどれくらい儲かってるんですか?」って聞かれてすごくびっくりして。見てくださってる方からは、山崎のYou Tubeはすごい金を生んでると思われているみたいなんですね。これまで400本くらい動画を配信しているんですけど、それでも4,000円くらい。だから1本10円くらいなんです。それを言っておかないと、周りの人にめちゃくちゃ得してるって思われるんだなって。

 

指出学校長:それが現実なんですよね。馬場さんの話は、僕もそのとおりだなと思っていて、北風と太陽のように追いかけすぎず、自然にできていくのがいいなと思います。ローカルプロジェクトって、行政の方も仲間になることがありますよね。行政と協働でプロジェクトをされているお二人にお伺いしたいのは、行政の職員の方がどう関わってもらえると、プロジェクトが上手く進むのか。そのあたりいかがですか?

 

馬場さん:行政マンの美学ってあるなと思うんですよ。行政の方って、自分がプレーヤーになってはいけないじゃないですか。民間の人たちががんばれるように、縁の下で支え続ける役割なんですよね。その美学があると思ってるんですよ。僕がこの人いいなって思う行政の方は、その美学がしっかりしてる人。もう一つは、行政マンはクリエイターだと思ってるんです。なんでかというと、政策を立案するわけですよ。

 

 

山崎さん:クリエイティブだ。

 

馬場さん:最高級のクリエイティブだと思うんです。だから目立たないように、人を支えるように振る舞える美学を持ったアノニマスなクリエイター。そういう人、かっこいいなと思いますね。

 

山崎さん:条例や政策、予算をつくるとか、条例の読みかえ方を知っていたりとか、役所の人たちは役所のプロフェッショナルがありますよね。例えばイベントをやるときに、「公園で火を使うのはダメです」で終わりにするのではなくて、どうすれば火を使えるように条例を読みかえるのか。そういうことをグイグイやってくれる行政の人はすごくかっこいいと思うし、民間側としては動きやすいですよね。

 

指出学校長:今お話いただいたようなかっこいい行政の方がいると、まちですてきなイベントができるんだなと思いました。今僕の頭のなかに浮かんでいる郡山市の行政の方は、みんなそんな人たちです。

 

 

人生を楽しむ、おもしろがる。
それ自体が、仕事になっていく。

 

指出学校長:そろそろクロージングに入りたいと思いますが、最後に馬場さんと山崎さんに、今日の感想と来年以降に何か考えていることなどあれば、教えていただきたいと思います。

 

馬場さん:仕事の意味が変わってくるなと思っているんです。19世紀は仕事のことを労働って言いましたよね。でも20世紀になって、ワークって言うようになりましたね。僕らは仕事のことをワークって呼んでいて、「今日も仕事かあ…」って思いながらやっているかもしれない。でも今後、僕たちがやっている仕事やワークはAIやIoTが勝手にやり始めてしまうかもしれないし、ワークがAIによってなくなる可能性がある。じゃあ次の時代、私たちは仕事のことを何と呼ぶのか。「プレイ」だと思うんです。遊んでいるということです。あらゆることを機械がやるようになったときに、人間に残された仕事は、楽しいことを創造することかもしれない。それが「プレイ」。実際、僕らはサッカー選手や野球選手を「プレーヤー」って呼んでいるし、知らず知らずのあいだに地域で活躍している人を「プレーヤー」って呼んでいますよね。それに気がついたんですよ。今日、人生を楽しむという話が前半にあったと思うんですけど、自分の人生を楽しむことを追求することそのものが、仕事になるかもしれないと思いました。仕事を“should”だと思わずに、“play”の感覚でやるような時代になる気がしています。

 

 

山崎さん:たしかに、「楽しむ」って今日のキーワードになっていると思いました。やっぱり、いかに楽しむかということと、楽しみの中身でしょうね。何を楽しいと思うのか。何をおもしろがるのか。読み書きそろばんのようなリテラシーというか、技術がいると思いますね。これまでは労働に対して技術が必要で、遊ぶことについては技術がいらなくて、労働や仕事で手に入れたお金を使えば、サービスや誰かが自分を楽しませてくれると思っていた。もうそれらがなくなってくるとすれば、楽しむこと自体の技術を高めていいかもしれないと思いますね。そうすると、これまで楽しみだと感じていたことが、本質的な楽しみではなかったり、賞味期限の短い楽しみであったりすることに気づく瞬間があるかもしれない。誰かに与えてもらうのではない「自ら生み出す楽しさ」というのは、そのなかに困難も含まれているし、めんどくさいことも含まれているんですけど。きわめて賞味期限が長いんですよ。我々はその楽しさについて、もうちょっと知識や技術を高めていかないといけないと思いますね。今日はありがとうございました!

 

 

指出学校長:こおりやま街の学校というのは、郡山市役所の若手職員さんをはじめ、ヘルベチカデザインという郡山市にあるデザインファームさんがつくってくれた素敵な空間なんです。まちをおもしろがる一つのお手本だろうなと思いますし、ここに来てくださった方がいるからこそ、完成するおもしろいプロジェクトだと思います。みなさん、ありがとうございました!

 

山崎亮 氏

studio-L代表/関西学院大学建築学部教授
コミュニティデザイナー/社会福祉士
山崎亮 氏

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』、『地域ごはん日記(パイインターナショナル)』、『ケアするまちのデザイン(医学書院)』などがある。

馬場正尊 氏

オープン・エー代表取締役/建築家/東北芸術工科大学教授
馬場正尊 氏

1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年OpenAを設立。建築設計、都市計画、執筆などを行い、同時期に「東京R不動産」を始める。近作は「Under Construction」(2016)「なごのキャンパス」(2019)など。近著に『民間主導・行政支援の公民連携の教科書』(学芸出版 2019 共著)、『テンポラリーアーキテクチャー:仮設建築と社会実験』(学芸出版 2020 共著)など。

指出一正 氏

こおりやま街の学校 学校長
株式会社ソトコト・プラネット 代表取締役
未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」編集長
指出一正 氏

雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師。静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師等多数活躍。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。