2020 聴講レポート

「こおりやま街の学校」2時限目 徳谷柿次郎さん×木村昌史さん

まちづくりに対するさまざまな視点を学びながら、仲間を増やし、魅力を発信していくことを目的に始まった「こおりやま街の学校」。

2時限目は「ジモコロ」(https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/)の編集長を務める徳谷柿次郎さんと、株式会社オールユアーズ(https://store.allyours.jp/)の木村昌史さんを講師にお迎えしました。

 

かたや編集者、かたやアパレルメーカーとして全国を飛び回り、たくさんのおもしろい街、おもしろい人に出会ってきたふたりが、やりたいことに一歩踏み出すための心構えを教えてくれました。

 

 


 

2年ほど前に取材で出会って以来の仲という徳谷さんと木村さん。普段から食事をしたり旅をしたりと仲良しならではの掛け合いに、緊張もほぐれます。それぞれの自己紹介のあと、お話はゆるゆると本題へ。徳谷さんが近年考えを巡らせているという「やってこ」の精神をテーマに、木村さんとのトークが進んでいきました。

 

「「やってこ」って、他人へ鼓舞と自分への鼓舞を内包した言葉なんですよね。ここがスタート地点でその上に、「やる」「やってる」「やってみなはれ」と行動している人にはピラミッド状にいくつかのステージがあるように感じています」

 

 

徳谷さん曰く、「「やってこ」はピラミッドの一番下で、他人を信用し言葉をかけて一緒にやろうよという段階。可能性を切り拓くためのゾーン」だそう。「こおりやま街の学校」に参加している方々も、応募をした時点で「やってこ」の位置にいるのだと言います。その後、実際に行動を起こすと「やる」、続けていくことで「やってる」に変化し、最後にたどり着く極致が「やってみなはれ」。これは、サントリーの創業者、鳥井信治郎さんの口癖で、財力も社会的信用ももちろん仕事のスキルもすべて極めると、ようやく誰かのチャレンジをバックアップする側に行ける、というのが徳谷さんの考える「やってこ」の進化です。

 

それをふまえ、ふたりにはどんな「やってこ」の遍歴があるのかをお話しいただきました。

まずは徳谷さん。転機は2015年に立ち上げた「ジモコロ」だと言います。

 

 

「いま長野に住んでいるのもこれがきっかけ。ちょうどこの頃、地方創生の名の下にいろんな人が地方に価値を見出すことになって、そこにたまたまいられたからこそ会社の立ち上げもできました」

 

続いて木村さんにとって最大の「やってこ」は、2017年から開始した24ヶ月連続のクラウドファンディング。最終的に5800万円の支援金が集まったこの取り組みから看板商品の「着たくないのに毎日着てしまう」シリーズが生まれまたそう。

 

 

「自分のやってることで、それまで出会えなかった人たちと知り合えたと実感したのがクラファンでした。いまはその経験をふまえて、自分がお客さんだったら欲しいサービスを「やってこ」しているところですね」

 

まさに「やってこ」を実践しているふたり。しかし、多くの人々と接して実感しているのは、何をしていいかわからない人が圧倒的なマジョリティだということ。

 

「最近はSNSやTVの影響で何者かにならないといけないというプレッシャーを受けている人が多いように感じます。でも誰かに言われたことをしたり、真似したりしてもうまくいきません。なぜなら「やってこ」は自分の中にある根源的な何かをかたちにすることだから。たとえば、「こおりやま街の学校」なら、郡山をどうおもしろくしていくのかを考える場ですよね。こういった講義で人に話しを聞くのは大事なことですが、(話の)量と質を自分の中で担保できていないと前に進まない。想定していないような実体験とともに知識もワンセットで入れていかないと成長しないんですよね」(徳谷)

 

「もし、まだやりたいことが見つからないなら、「やってこ」してる人を「応援してこ」でもいいと思う。それもひとつの「やってこ」のかたちなんじゃないのかな」(木村)

 

ふたりの話に「やりたいことがなくて焦っている」「何者かにならないといけない気がしていた」と受講生から共感のコメントが多数。無理に「やってこ」にシフトせずとも、誰かの行動をサポートしたり、そもそも自分で自分を評価できるようになればそういったジレンマからも解放されるのでは、という視点が新鮮に響きました。

最後に徳谷さんが「やってこ」ができている人の特徴として挙げたのは「自分の代表作をすぐ差し出せる人」。例えばライターになりたい人なら書き溜めたブログやnoteでもいいので、本気のものを書いてこそ、初めて他者と会話ができるようになるとアドバイスしてくれました。

 

「努力は本来誰でもできるのに、方法とか手段ばかりに気を取られてしまいがち。それよりも自分の好きなことをひたすらやるほうが目標に近づけると思います」(徳谷さん)

 

「最初は馬鹿にされるかもしれないし、孤独になるかもしれない。それでも少しずつでも動いていける人がきっと夢を形にできるはず」(木村さん)

 

一見カジュアルなワードの中に、行動することの本質を見せてくれた徳谷さんと木村さん。ふたりの「やってこ」精神は、今回参加してくれた受講生たちに大きな気づきをもたらしてくれたようです。

 


 

さて、ここからは、本校生向けて行われた講義。

おふたりの話に刺激を受けた皆さんから、さまざまな質問が飛びました。

 

まずは、「行動するのが辛くなったときはどうしていますか?」という質問。

それに徳谷さんは「サポートしてくれる仲間を同時進行で増やすこと。ひとりでできることは限られているので、チーム作りをしましょう」とアドバイス。続いて「街をおもしろく見るために大切にしている視点はありますか?」という質問には、木村さんが答えます。

 

「そもそもクリエイティブなことは退屈から生まれると感じています。中学生がなぜバンドしたりするのかと一緒で、自分で何かを生み出したいという思いが人をクリエイティブにするのではないでしょうか。もし、退屈に思えないなら、実はいま住んでいる街がおもしろいってことなんじゃないですかね」

 

また、「仲間を集めるときに基準にすべきこと」という質問には、木村さんが「自分のやってることを見せた時に共感してくれるのが仲間。たとえ、とてもスキルの高い人がいても、自分たちの文化にフィットしないと後々すり合わせができずに揉めたりします。なので、何ができるかよりも一緒におもしろがってくれる人を探すのがいいんじゃないでしょうか」とコメント。徳谷さんは「波長が合う人に会ったら取材ツアーに誘います。3日も一緒にいるとその人のいろいろな面が見えてきて見極めができるんですよね。本当に仲間になりたい人とはなるべくフラットな状態で会うのがいいと思っています」と独自の仲間集めの方法を教えてくれました。

 

 

一方で「何者かにならなくちゃという考えに縛られていたけど、今日の話を聞いて自分には「やってこ」より「応援してこ」のほうが合ってると気付いた」という方や、「すぐに価値が認められなくても行動し続けることで、後から結果がついてくることもあると学んだ」と今回の講義についての感想を寄せてくれる方も。ふたりのお話がきちんと本校生の皆さんに伝わっていることを感じた瞬間でした。

 

そして最後は、いずれ郡山市内でマリンバの演奏会を開きたいという女性が、徳谷さんと木村さんに背中を押され演奏を披露する場面も。「やってこ」を実践する姿を見たクラスメイトから拍手が贈られ、2時限目の講義は幕を下ろしました。

 

 

1時限目ではさまざまな街づくりの事例について学び、今回は行動することの大切さと心構えのヒントを教えてもらった受講生の皆さん。郡山の街をおもしろく、魅力的にするために、これからどんな「やってこ」が生まれてくるのでしょうか。引き続きご注目ください!

文:渡部 あきこ

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