柴田 大輔氏(講師)
2021.10.9
開校式の約1週間後、土曜日の10時半から「まちがく」2時限目がスタート!この日の講師は「はじまりを、はじめる」をコンセプトに、まちづくり・場の賑わいづくり・コミュニティ支援などを行っている「はじまり商店街」の代表、柴田大輔さん。柴田さんの経験や活動から編み出された、一歩を踏み出すための「はじまり方」をレクチャーしていただきました!
○講師プロフィール
柴田 大輔
株式会社はじまり商店街 共同代表取締役/コミュニティビルダー
1988年生まれ秋田県出身。東京の家具メーカーで働くも、暮らしの違和感を感じ、鎌倉に移住。鎌倉を拠点にシェアハウスやゲストハウスの運営していた。他にもカフェ・バル・家具屋に関わりながら、街のコミュニティづくりに参画。現在は株式会社はじまり商店街の代表として「はじまりを、はじめる」をコンセプトに、まちづくり・場の賑わいづくり・コミュニティ支援などを行う。
この日の「まちがく」は、「郡山市郡山公会堂」で開催。大正13年の市制施行を記念して築造された建物で、国の有形文化財に登録されています。1時限目は郡山市役所が会場でしたが、「全5回の講義を通して郡山のいろんな魅力を知ってほしい」という運営事務局の想いから、市内のさまざまな場所で開催することになりました。レトロモダンが薫る公会堂は、重厚感たっぷり。前回とはまた違う空気感のなかでの講義は新鮮でした!
平成16年に改修工事が行われた「郡山市郡山公会堂」。建設当時の風情はそのままにリニューアル。
10時30分、「まちがく」スタッフのあいさつとともに、今日の講義がスタート!「みなさんおはようございます!土曜日の午前中、まだ身体が起きていない人はいませんか?みんなでラジオ体操からはじめましょう!」
全員でラジオ体操!身体がすっきりして、いいスタート。
講師の柴田大輔さん
柴田さん:みなさんおはようございます!「はじまり商店街」の柴田と申します。今日は楽しい時間を一緒に過ごせたらと考えています。よろしくお願いします!みなさん、いきなりなんですけど…最近「はじまりを、はじめてますか?」例えば、新しいことに踏み出してみたり、チャレンジしてみたり。僕の理想としては、「まちがく」を通してみなさんの「はじまりが、はじまった」らいいなと思っています。
柴田さんが代表を務める「はじまり商店街」は、本当に存在する「商店街」ではなく、「会社」です。この屋号にされた理由は、「この場からいろんなことがはじまるといいな」という想いと、「商店街のようなイメージだと、いろんなはじまりが、はじまりそう」という人馴染みの良さがポイントだったそう。
まちづくりを支援するイベントの運営企画を中心に、企業研修や移住定住のPR支援、各種施設の企画運営などもされています。「簡単に言うと、人が好きで、みなさんと一緒に未来に向かってまちを良くできたらいいなという会社です」と柴田さん。
「はじまり商店街」の活動は、「にぎわいづくり」をテーマにしたまちづくり・場づくり・ファンづくりの大きな3つ。
コワーキング施設の運営、ものづくり拠点の場づくり、地方のPR支援、カフェを拠点にしたにぎわいづくりなど、全国各地でさまざまな活動を展開されている柴田さん。「はじまり商店街」の大きな特徴、強みが、イベントの企画運営だそうです。
年間イベント数、332本!1年中、ほとんど毎日イベントをやっている計算になりますね。
柴田さん:うちは年間でだいたい300本以上、イベントをやっています。1年って365日でしょ。これを聞いたみなさんは、「……は?」って思うかもしれませんけど。ただこれは僕だけがやっているわけではなくて、うちのスタッフと一緒にやっているのでこれくらいの数になりますね。イベントってなんか大変そうって思うかもしれないですが、「たくさん集めよう」とは思っていません。「小さい人数で交流をどんどん生む」。それを継続することで、まちの魅力向上やファンづくりを大切にしています。
注目してほしいのが、「84」という数字。これは、イベントを通してつながった方のうち「イベントをやりたい」と声を挙げてくださった人の数。もともとイベント参加者だった方が、イベントをつくる側になってくれているそうです。そうやって仲間、関係者を増やしつつ、「一人ひとりの想いに寄り添いながら、自己実現につながるようなにぎわいづくりをサポートしていきたい」と柴田さんは語ります。
オンラインのトークイベントもたくさん。有名ではないけど、地域でがんばっている人にマイクを握ってもらい、話してもらうことが多いとのこと。
柴田さん:僕らは「まち歩き」をしょっちゅうやります。自治体さんからイベントのご相談をいただいた時に、そもそも、そのまちを知らないということもあって。なので、まずはまち歩きをして、まちの魅力を探します。みなさんの好きなところ、気になったところを写真に撮ってもらって、データを集めるんです。そしてデータを地図上にマッピングして、アーカイブしながらまちを知っていくんですね。
柴田さん:特に僕が見ているのは、「人」。あと公園での過ごし方をよく見ています。ちょうど昨日、福島県立美術館の前にある芝生広場にいたんですけど、ご夫婦が何組もいるのを見て「いい過ごし方だなあ」って。ぜひみなさんも、まち歩きを楽しんでみてください。
柴田さん:とはいえ、みなさんの中には「なにかをはじめるのって難しそう」「ちょっと怖い」と思う方もいるかもしれませんね。でも大丈夫です!
柴田さん:一人ではじめようとすると不安になるけど、誰かと一緒にやれば怖くないんです。僕も「はじまり商店街」を立ち上げた時はそうでした。ぜひみなさんも、誰かと一緒にはじめてみてください。そのために、普段から自分のやりたいことや好きなことを発信して、仲間を見つけておきましょう。それが家族でも、友達でも、趣味のコミュニティ仲間でもいいんです。一緒にやる意識を持っておくと、一歩を踏み出しやすくなりますよ。
○柴田さん流!はじまりの、はじめ方。
・一人でではなく、誰かと一緒にはじめる
・普段から自分の好きなことや、やりたいことを発信する
・想いに共感してくれた人と仲間になる
・仲間と一緒にはじめる!
柴田さん:ちなみに僕は1回だけ、まさかのイベント来場者数「0」という記録を出したことがあるんです。僕、ナポリタン好きなんですよ。だからナポリタン好きな人が集まって、いろんなナポリタンについて知るイベントをやろうと思って企画したんですけど、まさかのゼロ!
柴田さん:でも僕はあきらめが悪くてですね、イベント名を変えてもう1回チャレンジしたんです。その名も、「そうだ!ナポニケーションしよう!」っていう。「ナポニケーション」って、造語ですよ。そしたらね、なんと30名を超える方々が参加してくれまして。だからね、みなさん。あきらめないで、自分の好きなものは発信し続けましょう。そうしたら、仲間はきっとできますから。
柴田さん:今日のタイトルにもなっていますが、「まちに一歩踏み出し、仲間を集め、やるたいことを考える」ときに、僕はいつもこの6つを大切にしています。
柴田さん:まずは「街の資産」を見つけることです。さっき、まち歩きの話をしましたけど、そうやって「まちのいいところ」を見つける。そこから、「視点とアイディア」が生まれてきます。そこで大切なのは、今日もいろんな世代の方が集まっているように「多様性」や、そこから生まれる「コミュニケーション」。そして何よりも「共感」が大事だと僕は思います。みんなが「共感」することは、「はじまり」やすいですから。みんなと一緒に、ここからはじまる「はじまり」にワクワクする気持ちも持っていてください。
柴田さん:じゃあ例えば、「イベントをやりたい!」「なにかはじめたい!」と思った時に、どんなことを考えたらいいのかをお話しようと思います。
柴田さん:まずは一人ひとりが「やりたいこと・はじめたいこと」は何なのか。「自己実現」から考えてみるといいと思います。そしてその「やりたいこと・はじめたいこと」が、周りの「共感」につながっているのかを考えることが大事です。さらに、「自己実現」と「共感」を結んでくれるのが「課題」です。みなさんも多分、お困りごとや悩みってありますよね。それが個人の課題でも、地域の課題であっても。実は「課題」っていうのは、みんなの暮らしや働き方などの「共通項」になっていることが多いです。それが「共感」にも「自己実現」にもつながりやすい。ですからみなさん、自分がなにかはじめようとしているときに、この「自己実現」「共感」「課題」の3つのうち、どこからスタートしているのか考えてみてください。特に僕は、「共感」からはじまっているとサイコーだと思います。
柴田さん:そしてこの「5W3H」の問いが、僕自身いつもイベントをするときに考えていることです。スタッフにもずっと問い続けています。「なにかやりたいけど、なかなかはじまらない」っていう人もいると思うんですけど、まず「いつやるか」と決めるといいと思いますよ。その日程も決まりづらいときは、だいたいその日から6週間後くらいをイベント開催日にするといいと思います。僕らはいつも2週間で企画を考えて、その後4週間を集客の期間にしています。ぜひ参考にしてみてください。
お昼休みをはさみ、午後からはワークショップを開催。前回と同じく5チームに分かれ、午前中の講義での学びをベースに「自分たちのまちでやりたいこと」を考えて発表するワークに取り組んでもらいました。
○ワークショップの流れ
1.まちでやってみたいことを考える個人ワーク
2.チームで意見をシェア
3.みんなのアイデアを掛け合わせて、ひとつのイベントをつくる
4.模造紙にアイデアを書き出してチームごとに発表!
個人ワークでは、付箋にアイデアを書き出していきます。
真剣な表情!
みなさん黙々とワークに向き合っています!
感染症対策のアクリルボードに付箋を貼って、アイデアを共有。コロナ禍ならではのスタイルですね!
みんなのアイデアを見ながらシェア。
一人ひとりアイデアを発表するチームも。
柴田さんもアドバイスしてまわりながら、ワークをサポートしています。
付箋をうまく使って、みんなの意見を分かりやすく可視化している「薄皮饅頭」チーム。
みんなのアイデアをもとに、どんなイベントができるかをディスカッション。
共同で畑をやる・スナックバー・スタンプラリー・山でウクレレの会…いろんなアイデアであふれています!
アイデアがまとまったみたいですね。皆さんいい表情!
チーム「ゆべし」:私たちが考えたイベントのコンセプトは「こおりやま・まちの弁当箱」。郡山はのり弁が有名で、そこから生まれたアイデアです。開成山公園で食、アート、音楽など、まちの魅力的なコンテンツをブースで展開し、お弁当箱のおかずを詰めていくような感覚で、スタンプラリーをできないかと考えました。公園やSNSで、一人ひとりつくり上げたお弁当をシェアするのもいいなと思っています。
チーム「カフェオレ」:イベント名は決めていないのですが、郡山市内にある日本大学近辺で、誰もが訪れて交流できる場所があればいいなというアイデアが出ました。地元の方々に郷土料理をつくってもらうことで郡山の文化にふれたり、学生がお年寄りの方にパソコンの使い方を教えたりして、大学生と地域住民がつながるきっかけになればいいなと考えています。
チーム「ままどおる」:チームメンバーに「鹿島大神宮」の神主さんがいることから、神社を軸にしたイベントアイデアが生まれました。その名も「神社万博in鹿島大神宮」です!もともと神社は地域の子どもたちや住民が集まる場所でしたが、近年は神社ばなれが進んでいます。神社に昼の部・夜の部のイベントコンテンツを仕掛けて、人々の交流を育みたいと考えました。
チーム「薄皮饅頭」:僕たちのチームはたまたま、建築や空き家の利活用に携わっているメンバーが集まっているんです。そこから、「郡山物件さがし・まち歩きツアー」を考えました。ツアーの参加者と一緒にまちを歩きながら郡山の空き家を探し、解体し、リノベーションして、新しい場を完成させます。ただ空き家のリノベーションをするのではなく、途中でイベントやワークショップを開くことで集客や認知度向上をはかり、ファンを育てることでコミュニティ形成につながると思いました。
チーム「クリームボックス」:多世代で交流する場がほしいと思って、「ばっぱの宿」という企画を考えました。「ばっぱ」は「おばあちゃん」のこと。 おばあちゃんの家を宿にして、みんなで畑仕事や手仕事、料理などを一緒にすることで、まちの文化や歴史を知りながら交流できたらいいなと考えました。いろんな年代の人が、自分の考えを表現できる場です。
柴田さん:みなさんお疲れさまでした!こうやってプライベートで、誰かと意見を交わしながら一つの方向性をつくっていくワークショップって、なかなかやる機会がないですよね。今のようなコミュニケーションを重ねて、いろんな角度から新しいアイデアが生まれていったらいいなと思います。また今日ここから、みなさんの「はじまり」がはじまった気がしますね。この先も「こおりやま街の学校」を楽しんでください!
今回もみなさん、いい笑顔!
ワークショップの後は、放課後の時間。本校生のみなさん同士の交流や、柴田さんと楽しげに話しをする姿があちこちで見られ、会場があったかい和やかな空気で包まれているのが印象的でした。
株式会社はじまり商店街
共同代表取締役/コミュニティビルダー
柴田大輔 氏
1988年生まれ秋田県出身。東京で家具メーカーで働くも、暮らしの違和感を感じ、鎌倉に移住。鎌倉を拠点にシェアハウスやゲストハウスの運営していた。他にもカフェ・バル・家具屋に関わりながら、街のコミュニティづくりに参画。現在は株式会社はじまり商店街の代表として「はじまりを、はじめる」をコンセプトに、まちづくり・場の賑わいづくり・コミュニティ支援などを行う。
はじまり商店街 HPhttps://hajimari.life/