聴講レポート

2020.09.26

「こおりやま街の学校」1時限目 指出一正さん×堀口正裕さん

いよいよ始まりましたね!「こおりやま街の学校」。

開校前から日本各地の街づくりの現場で活躍する講師陣の顔ぶれも話題となっていましたが、一体どんな講座が行われるのか楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか?

 

9月25日(金)の18:00から開催された記念すべき第1回目には、一般公募から選ばれた、郡山に縁のある30名の本校生に加え、講座の一部を傍聴できる聴講生100名ほどが参加。札幌から沖縄まで、年齢も性別もバックグラウンドもさまざまな方々が集まりました。

 

学校長を務めるのは雑誌「ソトコト」編集長・指出一正さん。実は郡山には何度も訪れており、時にはレンタカーを借りて湖南や逢瀬のあたりまで足を伸ばすこともあるという、なかなかの“郡山通”です。そんな指出さんより、オリエンテーションとして「こおりやま街の学校」が目指すものを語っていただきました。

 

 

街を面白くするには編集の視点があるといいんですよ。

編集の視点とは情報を整理し、伝える手段を考えて発信すること。

その上で私が大事にしているのは、井上ひさしさんのこんな言葉です。

“むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、

まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことは、あくまでゆかいに“。

いろんな課題を難しいままで理解しないで、愉快に落とし込む。

そうしたら街は輝きを放ち始めます。

どうか街を面白がる視点を身につけてください。

 

 

 

 

▲講義中の指出学校長

 

また、「こおりやま街の学校」は、これまで同じ街に暮らしながらすれ違っていた人を出会わせる場でもあること、そこから何かやってみたいと声をあげる人が現れ、応援したい人が出てくるのが街づくりのスタートになるというお話も。例として郡山を拠点にさまざまなデザインワークを手がけるヘルベチカデザイン、東京・尾山台ではじまった「おやまちプロジェクト」、鹿児島・阿久根市発の「イワシビル」を挙げながら、「社会を変えるような大それたものでなくても、クスッと笑えて胸が温かくなるようなローカルプロジェクトが生まれたらいいですね」と、期待を寄せました。最後に『街の面白く見つける3か条』を伝授!

 

  • 小さな視点と大きな視点
  • 自分ごととして楽しむ
  • 強さと弱さをかけてみる

 

本校生はこの3か条をふまえて、これからどんな郡山の街の魅力を見つけていくのでしょうか?

 


 

さて、オリエンテーションも終わり、1限目の授業のはじまり。

ゲストは「「TURNS」プロデューサーの堀口正裕さんです。指出さんとはお互いにリスペクトし合う仲だそうで、講座は和やかに始まりました。テーマは、日本各地に出向き、さまざまな地域の活動や人を紹介してきたふたりが思う「街を面白く見つける方法」。郡山市をより魅力的にするために参考になりそうな事例を交え、街づくりのヒントを探りました。

▲講義中の堀口さん

 

まずは堀口さんから。

地方を取材する中で、時には「地方はそんなにキラキラしていない!甘くない!」と言われることもあるそうですが、そんな時にはこう答えていると言います。

「確かに活躍している人は輝いて見えるものですが、それは地方であることとは関係がないはず。本人にはそんな意識はないし、むしろ輝いて見えるのは地味な日常の積み重ねがあるからなんじゃないかと思うんです。街づくりの醍醐味は住民たちが楽しく日々を過ごし、小さな幸せを感じられるような変化を生むこと。決して特別な人しかできないことじゃないんです」

それをふまえ、堀口さんが挙げてくださったのは以下の3つの例でした。

 

  • 何もしない合宿(静岡県裾野市東区 おやじの会)
  • みせるばやお(大阪府八尾市)
  • 地域×TURNS「TURNSシネマ」〜高校生が主役の映画作り!〜(兵庫県加古川市)

 

 

▲堀口さんからのメッセージ

 

 

紹介を聞いて、「小さくても構わないから、その中で世代をまたいで人が出会い、

関係性を紡いでいる事例ですね」と指出さん。堀口さんも、「まさにそうで、地味なことの積み重ねが実は破壊力を生むんです。繋いでいくことが楽しいし、偶発的な出会いから広がっていくのも素敵ですよね」と話してくれました。加えて、指出さんは、継続性の高さと、続けていくことで街がどう変わっていくかがきちんと見える点も評価。「一見、“打ち上げ花火”に見えても、その裏で関係性が続いていくパターンもあるので、そこを見誤らないで寄り添っていきたいですね」と話す堀口さんの視点にも共感を寄せていました。

 

一方、指出さんが挙げた事例は以下の3つ。いずれも、自分たちが暮らしている街にどんな人がいて、どんな魅力的な物事があるかに着目した人々の例ということです。

 

  • 「かがみがはら暮らし委員会」(岐阜県各務原市)
  • 中村周さんと「ビルトザリガニ」(栃木県宇都宮市)
  • ケルナー広場(群馬県高崎市)

 

 


 

街の編集者・10の質問

 

○わかりやすい内容ですか?

○文脈がつくられていますか?

○伝えたいことを絞りましたか?

○個人の気持ちが込められていますか?

○読む人の気持ちを考えていますか?

○文章に頼りすぎていませんか?

○自分の大好きな言葉や写真を使っていますか?

○その土地への愛情が詰まっていますか?

○未来を向いていますか?

○おもしろい内容になりましたか?

 


▲指出学校長からの問いかけ

 

今回、なぜふたりがそれぞれに街づくりの例を挙げたかについては、受講生に“街が面白くなる感覚”をロジックではなく知って欲しいという思いがあったから。「自分にはすごいことはできないなんて思わないで。小さなきっかけから物語もプロジェクトも始まるんです」と指出さん。すると堀口さんも、「思いを行動に移した時に化学反応が起き、出会いが生まれ、街との関わりしろが見えてくるはず。そうやって続いていくのが地域づくりの面白さですね」と語ってくれました。

長らく地域を見つめてきたふたりだからこその視点は、漠然とした“街づくり”という言葉に、確かな輪郭を与えてくれたようです。

 


 

ここからは、第1限目の後半、本校生のみに向けて行われた講座です。

オンライン上とはいえクラスメイトとの初顔合わせとあって、ひとりづつ受講の動機や関心のあることを交えながら自己紹介を行いました。

それぞれのお話を聞き、「ここから生まれるかもしれない郡山市の新たな動きが楽しみ!」とワクワクが隠せない様子の指出さんと堀口さん。その後、急遽、本校生からの質問を受け付けることに。

▲対談の様子

 

Q:外から見て郡山に足りないものは何ですか?

堀口さん「情報発信については、強化というかいろんなやり方があるかもしれないなと思います。というのも、事前に街の施策なども教えていただいたのですが、こちらの不勉強もあって届いていないことがあるのかな、と感じたので。私ももっと郡山のことを勉強しなくちゃなと思いました笑」

指出さん「いろいろ持っているがゆえに、発信をする順番やどう伝えるかの編集がなされていないのかなと感じています。あれもこれもというより、面白いものをひとつでいいから押し出していくのも必要かな。あとは切り口の面白さも考えてもいいかもしれないですね」

 

Q:地方と都市の境目とは?

指出さん「郡山という街はマシンメイドの精緻な部分がある一方で、街づくりにおいてはあるハンドメイドな手触りも感じます。そういう意味で、地域の活動においても、ハンドメイドとマシンメイドなものが合わさったようなものができるといいなと思いますね。例えば今はイベントにしろ、大きい代理店が企画したような誰もが楽しめるものより、その場所の人じゃないとわからない土着性のあるもののほうがクリエイティブでかっこいいと思われる時代。そう考えると、郡山らしさとスタンダードが合わさるような仕掛けはローカルならではと思いますね」

堀口さん「震災後に『TURNS』を作ってから、都市とローカルの対比をテーマにすることも多かったんですが、それが今やどこでも学べる、仕事ができるようになって、特にコロナ禍の中では都市との距離感を考えるいいチャンスであるように感じます。私自身も境目はあまり意識しなくなりましたし、地方に増えているクリエイティブな人からいつも学びを得ています」

指出さん「確かに境目は曖昧になりましたね。どこにいても何かができる状況の中では、都市も地方も関係なくて、自分が輝けるステージを見つけられているかどうかが課題。たとえば「こおりやま街の学校」を見つけてくださった皆さんはここから表現につながるかもしれませんが、今度はそれを見つけられない人をどう仲間にしていくかが重要かなと思います。境目そのものよりも、その場所にある動きをどう見つけられるかを意識していきたいですね」

 

Q:何か行動に移すときに一歩踏み出すためのアドバイスをいただけますか?

堀口さん「ひとりで背負うのではなく、仲間を増やすこと。地域の中に理解者や話しやすい人を見つけましょう。それは必ずしも同じネットワークの中じゃなくていいし、その地域を良くしたいという人たちの中で発信し続けていればきっと仲間が得られるんじゃないかなと思います」

指出さん「自分が主体性を持っていなくても同じ思いの人に出会えたら、自然に“じゃあ一緒にやろう”となっていくんじゃないかな。トッププレイヤーが育つのが大事じゃなくて、チームの中でできることを見つける方が大事だし、そういうプロジェクトの方が各地で面白さを増している印象。無理に一歩踏み出さなくても、きっと順番は回ってきますよ」

 

▲受講中の本校生の様子

 

ひとつひとつの質問に丁寧に答えるおふたりのお話を、真剣な眼差しで聞いていた本校生たち。オリエンテーションとあわせてたっぷり3時間の、濃密な一時限目が終わりました。日本の各地で繰り広げられるさまざまな動きに、大いに刺激を受けたであろう彼らが、これからチームワークを発揮してどんな新しい郡山像を模索していくのか、とても楽しみですね!

ちなみに、講座の中では指出さんから「郡山といえばこれ!というものを教えて」というお題が出されました。寄せられたのは「クリームボックス」、天然温泉、ラーメン屋と焼き鳥屋の多さ、作詞家の丘灯至夫さんなど、バラエティに富んだもの。このキーワードが今後郡山の魅力発信につながるプロジェクトに生かされるのかどうかにもぜひ注目してください!