聴講レポート

2020.12.11

「こおりやま街の学校」5時限目 前田有佳利さん×後呂孝哉 さん

「こおりやま街の学校」5時限目は、参加者約70名。講師は、ゲストハウス情報マガジン「Foot Prints」代表 前田有佳利さんと、「Why Kumano(ワイクマノ)Hostel & Cafe Bar」オーナー後呂(うしろ)孝哉さんです。
今回は【ゲストハウス】を切り口に様々な事例をご紹介いただきながら、コミュニティづくりやまちの魅力発信について新しい視点とヒントをいただきました。

 

 

郡山クイズ「郡山に、ゲストハウスは何件?」

冒頭は新企画「こおりやまクイズ」。郡山の人口が33万人ということを確認した上での3問目、「郡山市にあるゲストハウスの数は?」。あなたは分かりますか?

 

 

正解は「1軒」。参加者の正解率はわずか34.5%で、半数以上が「5件以上はあると思っていた」という結果になりました。意外な結果に心を掴まれたまま、授業スタートです。

 

■全国を旅した前田さんが語る、ゲストハウスの魅力とは?

和歌山を拠点に全国200軒のゲストハウスを訪ね、2011年から、旅の記録をWebマガジンで紹介してきた前田さん。お話はまず「ゲストハウス」の定義から。


【ゲストハウスって何?】

「ゲストハウスにも様々なタイプがありますが、共通するのは「交流に重きを置いた空間」であること。日本ではインバウンド需要を見込んで1980年代前半に登場し、2011年頃から増えてきました。」

 

【ゲストハウスの魅力と役割を、3つのケースから感じ取る】

ゲストハウスには、なぜそれほどの魅力があるのか?実際の事例を見ながら、その一端を感じていきます。

 

▼1_泊まりたくなる街をつくる 「ちゃぶだいGuesthouse & Bar」(埼玉県川越市)

川越市は郡山とほぼ同じ規模の都市。年間7700万人の観光客を呼び込みながら、そのほとんどが「日帰り」だという課題を抱えていました。「ちゃぶだいGuesthouse & Bar」は、「泊まりたくなる街をつくろう」と考える仲間が集まって立ち上げたゲストハウス。地域の人々とのつながりを重視し、「オンライン人力車」などのコラボイベントを実施しています。

 

▼2_コンセプトは高知大使館 「かつおゲストハウス」(高知県高知市)

2つめは、「高知大使館」をコンセプトに、高知の特産や歴史を凝縮したユニークな宿。はとバス添乗員やタウン誌の編集者を経験してきた女性オーナーさんが、オーソドックスからマニアックまでを網羅した“濃い地元情報”を発信しています。

 

▼3_この場所を愛する仲間を増やす 「Guesthouse RICO」(和歌山県和歌山市)

「RICO」は、社会人塾をきっかけに生まれた、遊休不動産を活用したゲストハウス。ワークショップ形式でリノベーションを行い、「場所に愛着を持つ仲間」を拡大しています。コワーキングもできる飲食店を併設し、地元の人々の集合場所にもなっているとのことでした。

 

これらの例を見ると、明確なコンセプトに基づいて空間・時間をつくり、様々なしかけ・情報発信をしながら、地域の内外を問わず多くの人々を仲間として巻き込んでいくゲストハウス像が浮かんできます。そんなエネルギーのある場所に引き寄せられた宿泊者・地域の方々と交流する旅が、ゲストハウスの魅力なのかもしれません。

 

【前田さんは、まちづくりへも積極参加】

さらに話題はイベント事務局やライターとしても活躍する前田さんのまちづくり活動へ。2つの取り組みから見えてきたのは、まちを元気にするヒントでした。

 

▼理想の商店街を具現化した「ARCADE(アーケード)」

若者たちは「何にもない」と地元を離れていくけれど、実際には面白い人やお店が沢山ある。それをリアルに感じていただくために、「魅力的だと思えるお店を集めて理想の商店街を具現化しよう」というコンセプトで始まったのが、マーケットイベント「ARCADE」でした。

 

▼加太町の住人へのインタビュー「書くことで、まちの解像度が上がる」

ライターとしても活躍中の前田さんは、最近、和歌山市の漁師町 加太の人々15人にインタビューしたとか。そこで発見したのは、人々に改めて直接話を聞き、聞くだけでなく文字に起こすことによって、“まちの解像度が上がる”ことだったと言います。これは第二部の「まちを編集する」という視点にもつながっていく話。

 

■発想を転換「オンライン宿泊」でファンを増やした後呂さん

続いて登壇した後呂さんは、和歌山県那智勝浦町でゲストハウスを運営されています。

 


那智勝浦は、人口こそ郡山の1/22と少ないものの、世界遺産熊野古道などの「観光」と「温泉」「食」が揃う土地。後呂さんが運営されるゲストハウス「Why Kumano」には世界50ケ国から人が集まり、併設のカフェバーは宿泊者と地元の方が日常的に交流できる場になっていました。

 


しかし、オープンからたった9ケ月でコロナ感染が拡大。予約がなくなり、宿泊施設や飲食店が次々と休業する中、後呂さんは「休業じゃない動きをしたら目立つのでは?」と気持ちを切り変え、「オンライン宿泊」というまさかの発想に至ったのです。

 


【オンライン宿泊って、何?】

オンライン宿泊とは、「熊野に行きたいけれど今は行けない」「Why Kumanoに泊まりたいけど泊まれない」方をオンラインでつなぎ、バーチャルでゲストハウス宿泊をする新しい体験です。

宿泊者はZOOMでチェックインし、ゲストハウスと同じようにみんなで「乾杯」し、宿泊者同士の交流を楽しみます。

 


 

そして翌朝、熊野の魅力がたっぷり詰まった動画を観てチェックアウト。「熊野に行きたい」気持ちを増幅させて、ゲストハウスを後にするのだそうです。

 

【やってみて始めて分かる!オンライン宿泊の楽しさと余波】

前田さんの話にもあった通り、ゲストハウスは、出会いや交流を楽しむ場でもあります。泊ることだけが目的でないからこそ、オンラインでも、ゲストハウスの楽しさを体験できるのだそうです。

 

 

「オンライン宿泊」をやってみたら、結果的に次々とメディアに紹介され、国内外からオンライン宿泊者が殺到。オフラインが0軒の時期に、オンライン稼働率は100%だったとか。
「オンラインはどの地域もフラット。コンテンツだけで勝負できて、むしろアクセスが悪い方が価値があるんじゃないかと思います。」

さらに面白いのは、オンライン宿泊の後に、オフラインでも訪れる方が多いこと。
「オンラインで体験したら現地に行かなくなるのではないかという人がいますが、それは全く逆。オンラインで参加した人は、絶対オフラインで行きたくなります」
しかも、オンラインならペット同伴や障害者も容易に参加可能。どうしたら来てもらえるかではなく、どうしたらハードルのある方々が旅行できるかという視点も発見したと話してくれました。

 

 

中にはオンラインとオフラインを繰り返して、移住した人もいるとか。それほどまでに魅力が伝わる「オンライン宿泊」の楽しさは、体験してみなければ分からないかもしれません。

 

■第一部の締めは、質疑応答

眼からウロコの様々な視点を学び、第一部の最後は質疑応答の時間。チャットで寄せられた質問と回答をいくつか紹介します。

胸がすくような新しい視点と、沢山のキーワードをもらって、第一部は終了しました。

 

Q 郡山にはなぜゲストハウスがないのでしょう?

前田さん「人口とゲストハウスの数は実はあまり関連がないんです。ただ、ゲストハウスが増え始めた時期が2011年頃なので、震災の影響があるのかもしれません。」

 

Q 移住者と地元の人をうまくつなげない。(転入者サポートをしている方からの質問)

後呂さん「移住前、家や職を探すためにWhy Kumanoに泊まっていた人が、併設のカフェバーで地元の方と仲良くなることもある。ゲストハウスに限らず、地域の人との交流の場があったらうまく機能すると思う。」

前田さん「ゲストハウスが地域のハブになったり、移住サポートをしていたりするケースは多い。そういう方が増えたらいいなと思います。」

 

■第二部 対話しながら「まちの魅力の見つけ方」を掘り下げる。

第二部は本校生限定。ZOOMで講師を囲み、チャットと直接対話によって視点を深めていきました。その中でいくつものキーワードが提示されていたのですが、ここでは特に興味深かったものをピックアップして紹介します。

 

【記憶に残る場所と、“観光地”とは違う。】

「宿泊がその場所に行くことではなく、人とつながりに行くという視点が面白かった」という感想を受けてお二人が話してくれたのが、記憶に残るのは、観光地とは関係ないということでした。

後呂さん 「全国をまわって記憶に残っている場所は、観光地じゃなかった。“あの人と話したこの夜が良かった。だからこその町が好き”って感じ。

前田さん 「実際、宿が目的地になっているケースは多い。宿を知って、スタッフさんと話してディープな情報を知ることで、まわりの地域を知るという方は多いと思います。」

 

【まちを編集する=面白さを見つけ出す】

では、特に観光地というわけではない郡山の面白さとは、どこにあるのでしょうか?

後呂さん 「僕はその土地ならではのものが好きで、その土地の人しか行かない居酒屋とかを見つけに行きます。」

前田さん 「宿側からも、まちを編集するような提案ができると面白い。チェーン店しかないように見えても、 “実は路地に何十年もやっている純喫茶店がある”とか“そこの卵サンドがおいしくて”という視点が大事。そうやって編集すると、まちが面白くなると思っています。」

 

お二人は自分が住むまちの魅力に、どうやって気づいたのでしょう?

後呂さん 「僕は、全国を歩いて外から見てみたというのは大きかったです。地元の方は何にもない田舎だと言う。日常過ぎて気づいていないんです。例えば、那智勝浦には「マグロの無人販売」がある。他にはないでしょう?そこで僕は今、マグロを買ってピクニックする『マグピク』 を提案しています。そういうのが、まちを編集するってことだと思う。」

 

 

前田さん 「第一部で話した加太町のインタビューもそうですが、人の話を改めて聞いて、聞いた後に文字で起こして、調べて、まとめてみる。この町ってこんなに面白かったんだともう一歩深く見ることが出来るので、とてもおススメです。」

 

【ゲストハウスをきっかけに、つながる・仲間を増やす】

ここまでに分かったのは、ゲストハウスは、地域の中と外をつなげる存在だということ。同時に、後呂さんのカフェバーの例の様に、地域の中につながりを生む存在でもあります。
第二部の中では、「交流が主目的だとしたら、そもそも宿泊は必要ないのでは?」という鋭い質問もありました。これについては、前田さんから「2時間で仲良くなるより、1泊2日で仲良くなれる。同じ釜の飯を食べる感覚」という答えをいただき、思わず納得です。
一方の後呂さんは、「オンラインでつながった人が全国に500人いるので、オフシーズンにこちらから会いに行こうと思っている」と、コミュニティを広げることに意欲的。「こおりやま街の学校の受講生で『オンライン修学旅行』をするのも楽しいかも」というアイデアには、受講生のみんなが大拍手。賛成の声が上がっていました。

 

■あなたが、あったらいいなと思う宿は?

ゲストハウスの基礎から始まり、地域の魅力発見にまで話題が広がった2時間。
締めくくりとして、前田さんから「私の町にこんな宿があったら、こんな問題も解決できるし、みんなハッピーでいいのになの具体案を創造してみよう」という宿題が出されました。「自分の気持ちと他人の幸せを混ぜこぜにして考えてみてください」とのこと。次のホームルームでどんな答えが集まるのか、とても楽しみです。


最後に記念撮影をし、マリンバ奏者のアンドウエリさんによる美しい生演奏チャイムを聞いて、5時限目の授業を終えました。

 

文:佐藤 智美