MACHIGAKU REPORT まちがくレポート

【閉校式・5時限目】
わたしたちの郡山ウェルビーイング

指出 一正氏(学校長・講師)

 

2022.1.8

 

 

10月からスタートした「こおりやま街の学校」も、今回が最終回。この日は、指出学校長による講義と、後半は本校生によるプレゼンテーションが行われました。指出学校長による講義のテーマは、「わたしたちの郡山ウェルビーイング」。最近あちこちで「ウェルビーング」という言葉を耳にするようになりましたが、どんな意味なのか、どういうものなのか、みなさんはご存知でしょうか。実は、SDGsやまちづくりと深い関係にあるようです。指出学校長が事例を用いながら、分かりやすくレクチャーしてくれました。

 

 

○講師プロフィール

指出一正

株式会社ソトコト・プラネット 代表取締役

未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』編集長

雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師。静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師等多数活躍。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。

 

 

「ウェルビーイング」ってなに?

 

指出学校長:今日が最終講義ですが、これからが始まりだと思います。郡山をおもしろがるちからを身に着けたみなさんが、どんどん郡山を盛り上げていくのを楽しみにしています。今日は、これから街をおもしろくしていくうえで、大事な考え方をお話したいと思います。「ウェルビーイング」についてです。

 

 

近年、日常のあらゆるシーンで耳にする「持続可能な社会づくり」という言葉。まちづくりと切り離せないテーマであり、「ウェルビーイング」とも深い関係にあります。今回は、指出さんが関わっているプロジェクトをもとに、「ウェルビーイング」とは何かについて教えていただきました。

 

万博未来編集部ローカルツアーONLINE

大阪・関西万博の開催にむけて、関西2府4県に住む人たちを対象としたプロジェクト。アイコンを用いて、オンライン上で街をつくるというもの。

 

 

エディットKAGAMIGAWA〜高知市の流域を編集する〜

高知在住の編集者とともに、高知市の流域関係人口を増やすプロジェクト。

 

高知鏡川RYOMA流域学校

社会起業家や高知市内外の人とともに、流域での暮らしがより安全に豊かになる取り組みを考えるプロジェクト。

 

奥大和MIND TRAIL

奈良県で行われたアートプロジェクト。中山間地域でスナックをオープンし、社会起業家や指出学校長もマスターとなって、ナナメの関係性づくりに取り組んだ事例。

 

指出学校長:スナックのいいところは、人を拒まないところ。ローカルプロジェクトの大事なポイントは、人を拒まないことかもしれません。世代も属性も異なる人どうしがつながること、つまりナナメの関係性をつくることが街にとって重要で、スナックだとそれができるんです。例えば、アート好きな若者と、林業組合の組合長が、スナックなら出会えるんですよね。アートを見に来たはずなのに、スナックで飲んだ翌日に吉野杉を見に行くということが、実際に起こったんです。吉野杉は、響きはいいけど課題が山積しています。そんな新しい気づきや出会い、ナナメの関係性がスナックで生まれています。

 

 

指出学校長:スナックをやったもうひとつの理由に、地元の人や関係人口の誰かが、「自分でもスナックをできるんじゃないか」と油断してもらうことにありました。そう思ってくれた人が実際にいて、今回のプロジェクトのために用意したスナックの看板を、図書館の本のように貸し出ししています。スナックをやりたいと思った人は、この看板を引っ張り出して、ゲストハウスや自宅でもいいし、自由にスナックができるようにしたんです。するとスナックをやりたいという人が集まって、週に数回ほどスナックが街に開かれるようになりました。これって、すごく重要なことなんです。ローカルプロジェクトは一人で完結しないで、誰かと一緒にやったり、誰かに渡すくらいの軽やかな姿勢があってもいいかもしれません。

 

 

ここからが、「ウェルビーイングとは何か」についての具体的な話。ウェルビーイングをひと言で表現すると、「ごきげんな状態であること」だと指出学校長は言います。みんなが心身ともに良い状態にあることや、しあわせとも言い換えられます。

 

指出学校長:本当の豊かさって何なのか?という問いに対してのひとつの答えが「ウェルビーイング」です。誰かと比べての「しあわせ」ではありません。ちょっとカタい話になってしまいますが、日本がめざすビジョンとして「サステナビリティ」から「ウェルビーイング」へ以降していくことが国の会議で進んでいます。誰一人取り残さないという「SDGs」を受け継ぐ形で「ウェルビーイング」な社会をつくっていくことが大事だと、世の中が動いています。「ウェルビーイング」ってよく分からないなと思う人は、「わたしは今ごきげんだな」と思うなら、自分はウェルビーイングな状態なんだと捉えてください。

 

 

 

安心できる居場所があることも、ウェルビーイング。

 

指出学校長が教えてくれたのは、坂倉杏介さんというウェルビーイングの研究者。坂倉先生によると、地域づくりとウェルビーイングには、深い関係があるそうです。

 

指出学校長:自分が誰かに求められていること。自分の居場所があること。地域のことを深く知っていくこと。それがウェルビーイングにつながっていきます。みんなで何かをやるというときに、自分も入っていることの安心感が、まさにウェルビーイング。家や職場では生み出せないものを、地域がつくってくれます。まさに「まちがく」は、ウェルビーイングな場ですね。ここで新しいナナメの関係性や、友だちとはまた違う仲間ができて居心地がいいなと思ってくれているなら、ウェルビーイングであると言っていいのではないかと思います。

 

 

指出学校長が思う、ウェルビーイングな暮らしを実践している人。その例として紹介してくださった人たちがこちら。

 

南部歩美さん

富山県魚津市にて藍染をしながら、新聞配達員をされている方。この方が徹底しているのは、自分がごきげんであること。ソトコトの取材では、「わたしがごきげんであることは、家族にとって一番しあわせなんだ」と言い切ったんだとか。ゆくゆくは地域の人たちと一緒に、藍染の服を主役としたファッションショーの開催をめざしているそうです。

 

 

指出学校長:みなさんもきっと、自分が好きなことをやっているときは「ごきげん」ですよね。そのごきげんを持続させるために、社会や地域がどうなっていたらいいのかを考えると、ごきげんが3倍くらいになって戻ってくるのではないかと思います。

 

高木超さん

指出学校長が、「ローカル・SDGs」の第一人者だと紹介するのは高木さん。そんな高木さんが注目する街が、京都府亀岡市。亀岡はSDGsの取り組みが進んでいて、そのひとつにプラスチックバックの禁止条例があります。これにより、亀岡市内での小売店でのレジ袋がほぼなくなり、プラスチックごみが激減したんだとか。地域住民が大手ファストフード店にもプラスチック削減を呼びかけ、紙バッグに変える取り組みが世界に先駆けて行われました。

 

 

指出学校長:これは高木さんの言葉として聞いてほしいのですが、SDGsとエコは何が違うと思いますか?同じものだと思いがちですよね。でも、実は違うんです。例えば、ペットボトル。エコロジー的にはよくないから辞めましょうと言って、ペットボトルを廃止する。これがエコです。でもSDGsは違います。ペットボトルはたしかに環境に負荷をかけているかもしれない。でも、このペットボトルをつくっている会社で働いている人に、しあわせに暮らしていくための考え方を共有するためにはどうすればいいのかを考える。誰一人として、しあわせを取りこぼさないことが大事ではないかというのが、SDGsです。だからSDGsでは、何でも「悪だ」と決めつけられないんですね。僕自身、エコとSDGsの違いでもやもやしてたものを、高木さんが分かりやすく教えてくれました。

 

このほかにも、指出学校長から全国各地で行われているウェルビーイングな取り組みを紹介いただきました。

◯人がつながる湖北の暮らし案内所「どんどん」

三玉璃紗さんが案内する埼玉県・小川町の今

◯社会を動かすペンターン女子!

ただいまコーヒーラボ

ちやのきエンデューロ

◯三重県・大台町の「ワンコの森あそび」

 

ご興味がある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

 

 

“遠藤さんちをどうやってワクワクの舞台にする?”
各チームで考えたプロジェクトを発表!

 

昼休憩をはさみ、午後は各チームによるプレゼンテーション。休憩時間のあいだに、チームメンバーで集まって打ち合わせをしたり、相談したりしている本校生のみなさんの姿が印象的でした。

 

 

プレゼンテーションのテーマは「遠藤さんちをわくわくの舞台にするアイデア」。遠藤さんとは、チームカフェオレに所属しているまちがくの本校生です。普段は住んでいない持ち家が郡山にあるとのことで、まちがくのプロジェクト対象地として利活用の方法を考えることになりました。

 

プレゼンテーションにあたって、なんと、郡山市長、2時限目講師の柴田さん、3時限目講師の小野さん、4時限目講師の渡邊さんが来てくれました!

 

 

さて、ここからは各チームによるプレゼンテーションの時間。各チームのアイデアを発表した後、指出学校長と講師陣からフィードバックを受けます。このレポートでは、その発表の一部をご紹介!

 

◯チーム薄皮饅頭「思い出の曲で思い出をつくる」

 

本校生:コロナ禍でコンサートやライブの機会が減ってしまったのを、アイデアの種とした企画です。音楽には人と人をつなげるちからや、人を癒やす効果があり、みんなで生演奏をしたり聴いたりする場があるといいなと思いました。

 

柴田さん:今の時代だからこそ必要な企画だし、継続してやってくことが大事だと思いました。子どもも一緒に参加できたり、地域の関わりが増えてくるといいですね。

 

本校生によるギターの生演奏も!場のイメージが伝わってきます。

本校生によるギターの生演奏も!場のイメージが伝わってきます。

チーム薄皮饅頭のみなさん

チーム薄皮饅頭のみなさん

 

 

◯チームカフェオレ「街で学ぶ焚き火部」

 

本校生:遠藤さんちの庭で、処分に困っている庭木を薪にして焚き火をする企画です。焚き火は人の心を和ませたり、落ち着いて本音を語り合えるきっかけにもなるので、まちがくでつながったコミュニティを広げていけたらと考えました。

 

小野さん:焚き火という目のつけどころがいいなと思いました。でも、焚き火は友だちか、友だちの友だちくらいまでしか広がらない気もします。焚き火を象徴としながらも、例えば季節の食材を使った食事会を開いたりと、もう一歩踏み込んだコンテンツがあるとより良いと思いました。

 

 

チームカフェオレのみなさん

チームカフェオレのみなさん

 

 

◯チームクリームボックス「夕方会議から始まる“まちの灯火”」

 

本校生: わたしたちのチームでは、人とのつながりが生まれたり、居心地のよい場をつくったり、誰かの役に立ったりできるようなことを目的に、「街の床屋さん」「夕方会議」「おばあちゃん食堂」という3つのコンテンツを考えました。

 

渡邊さん:誰かに関わりたい。役に立ちたいけどきっかけがない。そういった課題感やコンセプトはとてもいいと思いました。こども連れの家族と、おばあちゃんが出会う自然な場づくりをしてあげると良さそうです。参加しやすさと、運営しやすさをシンプルにするとより良いと思います。

 

 

チームクリームボックスのみなさん

チームクリームボックスのみなさん

 

 

◯チームままどおる「サラケダスでありのままどおる」

 

本校生:自分をさらけ出すことを通して、未来の自分に出会える場をオンライン上でつくりたいと考えました。自分らしくいるには、その人のパーソナリティが表現されていることが重要。自分をさらけ出すことで、新しい自分に出会えたり、人との深いつながりが築けたりすると思います。

 

小野さん:さらけ出そうと言われて、自分らしさをさらけ出すのって正直難しいと思います。自然とさらけ出してしまう瞬間をどうつくるのかを考えると、企画が見えてくると思います。

 

渡邊さん:場所にとらわれず、オンライン上に場をつくる発想がいいなと思いました。このコンテンツが届いた人が具体的にどうなっていくのかを想像してみると、より魅力的な企画になると思います。

 

チームままどおるのみなさん

チームままどおるのみなさん

 

 

◯チームゆべし「好きルごった煮プロジェクト」

 

本校生:「好きル」とは、その人の好きなことと、スキルをかけ合わせた造語。 一人ひとりの「好きル」がかけ合わさり、新しいプロジェクトやわくわくが生まれる場をつくりたいです。「まちがく」のように「好きル」を磨く学校もやってみたいです。

 

柴田さん:まずは好きなことやスキルの見える化から始めるといいと思いました。その先に、プラットフォームづくりの準備をどうするのかという課題があると思うので、その計画も練れたらより企画の具体性が増すと思います。

 

チームゆべしのみなさん

チームゆべしのみなさん

 

指出学校長:みなさん、プレゼンテーションおつかれさまでした。ありがとうございました!まちがくを通して、みなさんは編集者のちからや、自分がつくりたいと思う郡山の未来をつくるちからを手に入れたのではないでしょうか。地域をおもしろくするのに大事なのは、楽しい空気をつくることです。最後に僕から、ウェルビーイングであるための4か条をお伝えして、「こおりやま街の学校」を締めくくりたいと思います。

 

 

ウェルビーイングの4か条

1.おもしろがるちからを持っていますか?

2.らしさを重ねて、らしさの先へ

3.楽しくて、意義のあること

4.自分がごきげんであること

 

 

これにて、2021年度こおりやま街の学校は終了です。まちがくが終わっても、まちがくを通して得た気づきやメンバーとのつながりは、これから先も郡山をよりおもしろがり、盛り上げていくうえで、わたしたちを後押しする支えになると思います。

 

「誰か」ではなく、あなたが、わたしが、郡山の暮らしを楽しく彩っていく主役。みなさんで一緒に、ごきげんな郡山をつくっていきましょう!

 

株式会社ソトコト・プラネット 代表取締役
未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」編集長
指出一正 氏

雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師。静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師等多数活躍。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。