KORIYAMA TOWN SCHOOL.

こおりやま街の学校 2023

SEMINAR

2時限目

9月3日終了しました

郡山市役所 本庁舎2階正庁
(郡山市朝日1丁目23−7/Googlemaps)

自分のまちを
どうおもしろがる?

自分のまちをいつもとは少し違った視点で見てみることで、新しい発見があったり、可能性が見えてきたりすると思います。それを面白がって何かやってみることが、何かに繋がることもたくさんあるはずです。僕自身もそうやって今事業をやっている気がします。自分のまちを面白がり、余白や関わりしろを見つけることをみんなで考えていけたら嬉しいです。

【講師】飯田 圭

合同会社シテン 代表社員
Okazaki Micro Hotel ANGLE オーナー

平成元年生まれ 山梨県出身。大学卒業後、山梨中央銀行にて勤務。同時期に「こうふのまちの芸術祭・ワインツーリズム参画」。空き家を友人と改装し、イベント実施やシェアスペースに。その他地域で多数イベント実施。NHK・Eテレ「U-29人生デザイン」出演。組織と個人の狭間で日々奮闘してきたが、平成29年1月より岡崎市Oka-Bizにて銀行時代の課題を解決するため転職。2017年スノーピークビジネスソリューションズに関わり、osoto立ち上げ。空き家と道路を使った一箱古本市開催。2020年6月に「ぼくらの“アングル”をきっかけに、岡崎のまちを捉えるマイクロホテル」というコンセプトで、まちの日常と訪れる人を繋ぐOkazaki Micro Hotel ANGLEオープン。

REPORT

「こおりやま街の学校2023」の2時限目は、「自分のまちをどうおもしろがる?」がテーマ。愛知県岡崎市で、マイクロホテル「ANGLE(アングル)」を営む飯田さんを講師に迎え、まちを能動的に楽しむ場づくりの考え方や、そのプロセスなどについてお話いただきました。


市民になった気分で、地域の日常に入り込める宿。

「アングル」は、ただ泊まるだけじゃない、地域のおもしろさを見出す宿。飯田さんが、岡崎で宿を運営するに至った背景や、「アングル」が目指すものなどについてお話しいただきました。

講師の飯田圭さん

飯田さん:そもそも僕は山梨県出身で、岡崎とは縁もゆかりもありませんでした。岡崎に移住してから、「岡崎は魅力的なまちなのに、どうして誰も魅力を発信しないんだろう」「もともとある岡崎のおもしろさを知ってもらいながら、自分でも何か事業を始めてみたい。地域でおもしろいものを生み出す仲間がほしい」と思っていたんです。そうした想いが、「アングル」の立ち上げにつながっていきました。

「アングル」は、岡崎市内にある空きビルをリノベーションした宿。この建物は岡崎市で最初にできたカメラ屋さんだったそうで、飯田さんが運営されているコワーキングオフィスでつながった地域の商店街の会長さんや、市役所の方から物件を紹介してもらったそうです。

改装前のビル。地域でもっとも古いカメラ屋さんの空きビルをリノベーションすることに。

改修は、中にあった家具や日用品の片付けからスタート。当時はコロナ禍に突入し始めた時期だったため、オープンなDIYイベントの開催は断念し、友人を頼りながら少しずつリノベーションを進めていきました。

飯田さん:宿の内装は、地域の魅力や地域のストーリーにふれられるインテリアにしたいと思っていたんです。そこで、地元の縫製会社さんにマットレスを特注でつくってもらったり、地元のインテリアショップさんにライトをつくってもらったり。そうしたインテリアには岡崎市産の木材の端材を使ったり。限られた予算の中で、どれだけ岡崎の価値や魅力を空間で表現できるか。地元の事業者さんの協力を得ながら工夫を重ねました。

クラウドファンディングにも挑戦し、多くのサポーターに応援されながらオープンを迎えた「アングル」。その名前に込めた意味や、想いをお話しいただきました。

飯田さん:ここはもともとカメラ屋さんだったという背景から、カメラ用語を使った店名にしたいと思っていました。「アングル」もカメラ用語でして、「角度」や「視点」という意味があります。まちをいろんな視点で見たり、いろんな視点が集まったりする場所にしたいという想いを込めています。それに、岡崎は観光が栄えているまちではありません。そこで何を観光資源にしようかと考えたときに、ここにある日常や暮らしに焦点を当てて、観光コンテンツにできないかと考えました。地元の人が通っている昔ながらの洋食屋さんや、銭湯が観光の対象になったらいいなって。ここに来られた人が、まるで市民なった気分で、岡崎の日常に入り込んでもらいたいです。


「アングル」をきっかけに、まちがいきいきと輝いていく。

飯田さんが「アングル」を運営するうえで大切にされていることを教えていただきました。


1. 暮らし感光(観光)
まちを観るだけでなく、暮らしを感じてほしいという想いから、「暮らし感光」をコンセプトに掲げています。「感光」はカメラ用語で、受ける光によって化学変化を起こし、写り方が変わるというもの。例えば、岡崎を訪れた人をきっかけに、地域に化学変化が起きたり、地域の人と外の人が関わることで持続的な関係性がうまれたり。人それぞれに異なる視点を「おもしろさ」と捉え、そこから新しい交流や関係性が広がっています。

2.「“異”日常」を伝える
一般的な「観光」といえば、「“非”日常」を体験しに出かけるイメージがありますが、飯田さんが心がけているのは「“異”日常」を伝えること。「“異”日常」とは、ふだんの暮らしとは異なる地域の日常を感じてもらうことを意味しており、岡崎の日常やふだんの暮らしなど、ありのままの地域の姿を観光コンテンツにされています。

3. 写真
もともとカメラ屋さんだった背景を活かし、地域のカメラ団体と連携してまち歩きイベントを企画したり、写真展を開催したりと「カメラ」をテーマにした取り組みも。また地域外から写真家を呼んでまちを歩きながら撮影してもらい、「アングル」内で展示。そうした取り組みを通じて、地域の人にとっても、自分のまちを新しい視点でとらえるきっかけが生まれています。

カメラを手に、まちを歩いて撮影

「アングル」内で写真展を開催

4. 地域内外のあわい(関係性)を滲ませる仕掛けとバランス
「アングル」の1階をカフェとして営業し、地域の中と外をかきまぜる工夫を取り入れられています。カフェはポップアップショップとしても機能しており、地域内外のつくり手さんを巻き込んでショップを開いたり、イベントを行ったりと、地元の人と外から岡崎に訪れた人が交わるきっかけを絶えずつくっています。

「アングル」の1階で開催したトークイベント

山梨県にあるガラス工房と、岡崎にあるお茶屋さんがコラボレーションしてイベントを行ったときの様子

アングルを運営して3年。さまざまな変化が、まちで生まれているそうです。例えば、今まで岡崎市を訪れていなかった地域・世代の人がまちを訪れるようになったり。アングルをきっかけに、まちに愛着を持つリピーターが増えたり。岡崎を訪れた人が、岡崎の魅力を発信してくれたり。また。地域内での変化としては、地域外から訪れた人の影響を受けて地元への愛着や誇りが高まった人や、主体的にまちに関わる人が増えたり、何かやってみようと活動する人が増えたり。飯田さん自身も、そうした人たちの事業計画の相談に応じたり、物件見学に行かれたりしているそうです。


「こうなったらいいな」、をかたちに。

飯田さん:アングルを立ち上げたのも、これまでにさまざまな取り組みを行ってきたのも、「こうなったらいいな」という妄想からスタートしているんです。例えば、ただ泊まるだけでなく岡崎のまちの魅力にふれられる宿がほしいと思って、「アングル」をつくったり。地域の人の溜まり場がほしいなと思ってカフェをつくってみたり。ショートステイではなく、暮らしの体験をしてほしいという想いからレジデンスを運営したり。まちの魅力を紹介しつつ、いい感じのお土産がほしいと思って、地元のお茶屋さんと一緒にブレンドティーのお土産をつくったり。

飯田さんが運営するレジデンス

地元のお茶屋さんとつくったブレンドティー

最後に、どんなプロセスを経て事業や活動が展開されているのか、飯田さんの思考の流れを教えていただきました。

飯田さん:まずは、観察することがすごく大事だと思っています。その地域でおもしろそうなことや、こうなったらいいなと思うこと。僕は意識的にまちを歩いて観察することもあります。その次に、何のためにやるのかという自分の軸や目的を決めること。そして、自分の苦手なことは誰かに頼んだり、得意な人にお願いすることも大切です。それに、一人で全部やろうとするとモチベーションも維持できません。そして最後に手段を決める。こんな流れで、企画を組み立てています。企画を考えるときは、まったく新しいものをつくるのは難しいので、何かと何かの組み合わせでおもしろい手段を考えたりしています。これは編集的な考え方かもしれません。あとは、自分がそのプロジェクトを動かしていて楽しいかどうか。それに、まわりも心地良いかどうか。これらを大切にしながら、日々活動しています。ぜひみなさんも岡崎市に遊びに来ていただいて、今日お話ししたことを体験・体感いただけたら嬉しいです。

本校生の声

ファンの視点で
郡山の魅力を発信していきたい。

青森県から参加
佐々木健人
さん

私は郡山市で結成されたアーティストグループ「GReeeeN」のファンで、数年前から郡山に通っていました。ですが、自分自身も郡山の魅力を知らなかったり、ほかのGReeeeNファンも郡山への関心はあっても魅力が伝わっていなかったりして、何かできないかなと考えていました。そこで、「まちがく」を通して郡山の魅力を知り、GReeeeNファンの視点で郡山のおもしろさを届けていけるのではないかと思い、私が暮らす青森県から郡山まで通いながらまちがくに参加しています。これまでのまちがくを通して、郡山の暮らしぶりそのものが観光資源になるんだと気づきました。さらに一歩踏み込んで郡山の人と関われる場所をリサーチしながら、発信につなげていきたいです。