2020 聴講レポート

「こおりやま街の学校」8時限目 水代優さん×鈴木成宗さん

 

毎回さまざまなジャンルのプロフェッショナルを招き、魅力的な郡山市を創出するためのヒントを学ぶ「こおりやま街の学校」。講師の方の活動や日本各地で起きている地域づくりの動きを知り、郡山市の魅力発信につなげることを目的にオンライン講義が開催されています。

8時限目は「goodmornings株式会社」(http://goodmornings.co.jp/ )の水代優さんと「伊勢角屋麦酒」(https://isekadoyabeer.jp/ )の鈴木成宗さんを講師にお迎えし、『「スモールスタート」と「地域づくり」』についてお話を伺いました。

 


 

今回は鈴木さんがクラフトビールの醸造家であることにちなみ、お酒を飲みながらお話していただくことに。

乾杯の後、まずはおふたりにとっての “失敗”に対する考え方からトークが進んでいきました。

 

 

水代「失敗は“失う、敗れる”とは書きますが、あくまで行動した結果。失敗によってノウハウが溜まるというポジティブな面もあります。本当にしてはいけない失敗は、大事な人を傷つけたり、期待を裏切ったりした時。それ以外はあまり失敗とは捉えていません」

鈴木「ビール造りなんて失敗の連続ですよ(笑)。良いビールができないのも失敗ですし、採算が取れないのも失敗。でも、無理なことにも挑戦しながら、失敗したことも俎上に上げて検証してみることは大事で、それによって我々自身の経験値も上がっていったのだと思います」

「失敗はネガティブなことじゃない」と語るおふたり。しかし、失敗を恐れて一歩が踏み出せないという方も多いように感じます。

鈴木「失敗慣れしていない人はツラいですよね。そういった意味でも、挫折しないレベルの小さな失敗を重ねられるスモールスタートが有効です。たとえば、1億円の余裕があるところで1億円の失敗をしたら再起不能です。ところが1千万円の失敗なら、4、5回目は失敗できますよね。経済的な問題なら、今はクラウドファンディングなどで資金を集めることもできますし」

水代「僕たちが運営していた海の家なんて、最初の2年はお客さんが来ませんでした。でも、最終的には“フランス人が夏に日本で行きたいところランキング”の2位になったんですよ! それも自分のためだったら頑張れなかったと思います。『この夕日が素晴らしいから誰かに見せたい!』みたいな、思いが実は大切だったりします」

 

 

小さな失敗にめげず、思いを持ち続けることで成功への道が拓けるとのこと。一緒に頑張る仲間はどのように見つけているのでしょうか。

鈴木「こんなことを言ったらバカにされるとか、恥ずかしいとかを恐れずに、声を上げることです」

水代「そう。同じように悩んでいる人にも会えるし、仲良くなって関係性を作ることができます。僕は街づくりでも同じような考えでやっています」

地域づくりと事業の設計の仕方についても話していただきました。

水代「事業にも地域づくりにも“縦軸”と“横軸”があって、縦はどう思われてもいいけど自分がどうしても突き詰めたいこと、横はできるだけみんながいいねと賛成してくれること、このふたつの視点が必要だと思っています。たとえば僕の本のセレクトショップ兼カフェは、100人いたら2、3人が来てくれたらいい。でも街づくりで2、3人しか賛成してくれないことはうまくいかないんです」

“縦軸”を突き詰めている鈴木さんもこう話します。

鈴木「僕たちは一点突破であるべきで、自分たちがいることで誰かが幸せになってくれなきゃ存在意義がない。だから他にないものを造り続けたいですね」

街全体を考える広い視点と、活性化への起爆剤となるような突き抜けた存在、その両方があって、街は面白くなっていくのかもしれません。

 

 

最後に熱狂的なファンを増やすための秘策も教えてくれました。

水代「自分のやっていることを自分で話しているうちは伝わらないんです。誰かに話してもらうことが重要。鈴木さんの周りには熱狂的なファンが多いですよね。初心者はまずは3人、自分と同じ熱量で自分たちのことを語ってくれる人を作ることです。あとは楽しそうにしていることですね」

鈴木「それは大事。楽しいところに人は集まりますから」

小さいことから始めて、失敗をたくさんすることが成功につながる。そのために声をあげ、仲間やファンを増やしていくことが大切と語った水代さんと鈴木さん。旧知のふたりの掛け合いも楽しく、受講者からは「とてもわかりやすかった」との感想が聞かれました。

 


 

ここからは、本校生に向けて行われた第2部の講義。今回はブレイクアウトルーム機能を使って、グループごとに第1部の感想を話し合うことから始まりました。10分後、それぞれのグループの対話の様子を発表してもらいます。

 

あるグループでキーワードとなったのは、“失敗”。

「失敗をすることはやはり恐怖ですが、失敗してもいいと言ってもらえることは安心、そういうステップがチャレンジにつながる」と感想を語ってくれました。

また、別のグループでは口コミの有効性について対話が進んだ様子。

「ネットの口コミも誰が言っているか信用できることが大事。もし期待して行ってみて裏切られたら、クチコミした人の評価がマイナスになる」と結論付けたそう。また「チャレンジは失敗が当たり前」という部分も印象に残ったと話してくれました。

鈴木さんからは、「ギャンブルの場合は失敗の確率は次も変わらないけれど、チャレンジの失敗は経験になりますから」と力強い言葉が。また水代さんも「信用の輪が回れば回るほどビッグなおみやげをもらえるんです。この人のためにと思ってどんどんアウトプットしていくと、全く違う形で成果につながることもある」と経験を話してくださいました。

 

 

なかなか自分の意見を言葉にできないという悩みには、「どんな小さな手助けでもいい。それが信用の輪につながる」と水代さん。鈴木さんも「まずは友達でも家族でも話しやすい人に話してみること。そうすれば耐性がつく」とアドバイス。たとえ反対意見があっても、言いにくいことを言ってくれたことに感謝してほしいとのこと。

そして大学生からは、社会人と学生の視点の違いについての感想が。

そこで水代さんが仕事上でぶつかる場合の例を挙げ、「正義の敵は別の正義。そんなときは自分の意見を変える準備があるという姿勢を見せることが大事。そこから未来が変わるかも」とコメント。聴く姿勢を示すには、五感をフルに使って、全身で表すと相手に伝わりやすくなると教えてくれました。

一方の鈴木さんは、相手と自分の言い分を、ひとつ上の次元から見るようにしているという心構えを話してくれました。

「何のためにやるのか、誰のためにやるのか、そこで結論が出たらもっと深掘りしていきます。深い根があると大きい木が育ちますし、高い山ほど裾野は広い。価値観やプライドを深掘りするのは自分にしかできないから、自分を見つめる過程が相手を理解する一歩になります」

 

 

事業の進め方、街づくりの話を超えて、コミュニケーションのあり方にまで及んだ第2部の講義。最後にふたりから出された宿題は「自分の好きなもの、好きなことについて」と「こうなったらいいなと思うこと」の2問でした。最後は飲み物を持って笑顔で記念撮影。クラフトビールについての話題が多かったことにちなみ、恒例のマリンバチャイムは『エビスビール』のテーマソングを演奏していただきました。

「こおりやま街の学校」も、いよいよ次回が最終回! 果たしてどんな講義が行われるのでしょうか。ご期待ください。

文:渡部 あきこ

 

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