KORIYAMA TOWN SCHOOL.

こおりやま街の学校 2023

SEMINAR

1時限目

8月19日終了しました

郡山中央図書館3階 視聴覚ホール
(郡山市麓山一丁目5-25/Googlemaps)

まちを面白がる
視点とは?

「面白がる」はふざけるという意味ではなく、自分が好ましくないこと、感性とずれていることでも" 面白い "と気づけるチカラ。普段の生活でも片手に握っていたい重要な武器です。これからプロジェクトを始める皆さんが、面白がっていなかったら、参加者も面白いと思ってはくれません。私が面白がって課題と戦ってきたストーリーを一緒に振り返ることが、面白がるとは何か?のヒントになったら嬉しいです。

【講師】唐品 知浩

合同会社パッチワークス アイデア係長

1973年東京都生まれ。大学卒業後、旅行会社を経てリクルートへ。不動産広告営業に携わった後2012年に独立。別荘専門不動産ポータルサイト「別荘リゾートネット」取締役編集長。2015年より地元東京都調布市で街をリデザインする合同会社パッチワークスを発足。アイデア係長として「ねぶくろシネマ」「いっぴんいち」「棟下式(むねおろしき)」ほかを企画し営業まで行う。個人としても日本全国でアイデア出し飲み会「面白がる会」を150回以上開催。2020年より日本橋横山町にコミュニティスペース「+PLUSLOBBY日本橋問屋街」をオープン。馬喰横山周辺の活性化を担う。グッドデザイン賞2019,2022受賞。


REPORT

2020年からスタートした「こおりやま街の学校」も、今年で4年目となりました。「まちがく」とは、こおりやま広域圏の街なかをキャンパスとして、「やってみたい!」「やってみた!」「たのしい!」を実現できる学校。今年度は「みんなのワクワクが生まれるつながる」をテーマに、まちがくの集大成としてプログラムを展開しています。この日は、指出学校長による開校式と、講師の唐品さんによる1時限目のセミナーを行いました。


みんなで、暮らしのワクワクを築いていく。

はじめに開校式では、指出学校長から参加者の皆さんへ、ワクワクしたプロジェクトを生み出すためのポイントをお話しいただきました。

指出学校長はオンラインでの参加。

指出学校長: 今日の講義のテーマは、「まちを面白がる視点」ですが、まちを見る視点は人それぞれに多様です。多様だからこそ、街がどんどん立体的になっていくんです。僕はここ数年、「ウェルビーイング」についてよくお話しさせてもらっているんですが、郡山はウェルビーイング度が高い街だと思います。新しいサードプレイスや、目的地になる場所がたくさん生まれている。人は移動を繰り返すほど、ウェルビーイング度が高くなるといわれています。そうしたウェルビーイングを街に生み出すために、まずは自分が飽きないことが大事です。新しいものに踊らされないで、自分の好きなものを持っておくといいと思います。今日は皆さんに、プロジェクトをワクワクなものにするためのポイントをお伝えします。そのポイントとは、

1. 関わりしろがあるかどうか
2. ごきげんな状態の企画・プロジェクトか
3. 中長期的なしあわせが、そのプロジェクトに含まれているか
4. プロジェクト・空間・まちにおいて、ここにいる安心感が、企画者と参加者にあるかどうか

ぜひこのポイントも参考にしながら、暮らしのワクワクをみんなで築いていきましょう。



関わりしろから、コミュニティが築かれていく

続いて唐品さんのセミナーでは、「まちを面白がる視点とは?」というテーマでお話しいただきました。唐品さんは、ご自身を「オモシロガリスト」と名乗り、固定概念に縛られず課題に対峙する「面白がる視点」を大切にされています。

「まちがく2023」開校日の前日、郡山駅前から開成山公園まで、まち歩きをしてきたという唐品さん。「オモシロガリスト」ならではのユニークな目の付けどころで、郡山の街を楽しまれたそうです。

唐品さんの活動は、不動産系のIT会社、イベントの運営、コンサルティングなど多岐にわたります。その特徴的な取り組みの一つが、「ねぶくろシネマ」。
唐品さん:野外で映画を見るというイベントを全国各地で開催しています。例えば、廃校になった校舎の壁に映画を投影し、卒業生とその家族を呼んで上映会をしたり。東京湾の夜景を見ながらミュージカル映画を見たり。競馬場でも開催しました。

また、みんなの自慢の逸品を、一品だけ持ち寄るマルシェ「いっぴんいち」の開催も。

唐品さん:普通はマルシェって、いくつでも出品できると思うのですが、「いっぴんいち」では本だけ、果物だけというように「1種類」しか出せないんです。僕の経験なんですけど、マルシェをまわっても、モノが多くて何を買ったらいいかも分からないし、店主さんともじっくり会話できないという感覚があって。そうした背景から、逸品を一品だけ販売するマルシェを行なっています。

また不動産分野では、東京の問屋街にある空き地にテントとキッチンカーを置いて、コミュニティスペースの運営もしています。

唐品さん:間口が狭くて奥に細長い、新しく建物を建てるのが難しい「隙間」の空き地を活用し、毎週のように立ち飲み屋を開いたりしています。問屋さんと、ここに来る人たちが一体となったイベントを開催したいと考えて、こうした場所でも「いっぴんいち」を開催しています。

こうしたイベントの企画運営だけでなく、YADOKARIとメディアの仲間と「小屋部」と題して「小屋」を建てるものづくりの活動もされています。ただ小屋をつくるだけでなく、いかに人を巻き込み、関わりしろをもちながらプロジェクトを実行していくことが重要。小屋づくりを通して、関わった人たちのコミュニティが形成されていく「コミュニティビルド」も大切にされています。

唐品さん:皆さんにお伝えしたいのは、こうしたイベントをやるときって、何でも1人でやろうと思わなくていいと思うんです。「こんなイベントをやりたいと思うんだけど」っていう会議そのものをイベントにしてしまってもいい。本番を迎える前に、小さなイベントを積み重ねていって、仲間とファンがある程度いる状態になっていれば、安心ですよね。

課題を、斜め45度のアイディアで解決していく。

最後に、唐品さんから「まちを面白がる視点」のヒントになればとお話しいただいたのが、課題解決型アイディア出し飲み会「面白がる会」。

唐品さん:僕は、イベントやプロジェクトを企画するときに、もらったお題に対してストレートに答えるのではなく、斜め45度の答えを返すことを続けています。これを一人じゃなくて、みんなでやりたいなと思って企画したのが「面白がる会」です。「課題解決型アイディア出し飲み会」と言っていますが、誰かの課題に対して、みんなで斜め45度のアイディアを出し合う大喜利大会みたいなものです。課題を持つ当事者や地域の人、自治体関係者など、いろんな人がフラットになって話し合える場をつくっています。

「面白がる会」ならではのポリシーもご紹介いただきました。一般的なワークショップとはひと味異なる場づくりが行われているようです。

・会議室ではやらない
・ポストイット方式は使わない(アイディアの数を出すのにはよいが、発想した人の想いを深掘りして聞くには不向き)
・ベースは飲み会。お酒を入れて頭を柔らかく
・おつまみは、「街や業界の課題」

また、「面白がる会」には3つのステップがあり、「発見」「課題」「解決」の3軸で行っているそうです。

「発見」では、「面白がる式街歩き」と題して、4〜5人のグループで街歩きをします。いつも見慣れた街でも、目を凝らしてみると街の楽しさが見えてくる。面白い風景や面白い建物を発見したり、気になっていたお店に行ってみたり、街の人と会話してみたり。街を見直す良いきっかけになると、唐品さんは話します。そして「課題」では、街や業界の文句を言い合う場を設けているそうです。文句は言い換えれば課題。課題はニーズ。少しずつでも課題を解決できれば、街は良くなっていきます。

最後に「解決」のフェーズでは、みんなで斜め45度の角度から課題を解決するためのアイディアを出し合います。

唐品さん:「面白がる会」のアプローチとして、ワクワクする未来を見据えて、そこにたどり着くための「ブッとんだ」アイディアを出してから、実現できるラインを探すということを心がけています。斜め45度って、言い換えれば「ブッとんでいる」ということ。その方が、みんながワクワクして未来を想像・創造できるんじゃないかと思います。

そうして誕生した取り組みが、先ほどご紹介した「ねぶくろシネマ」。幼い子どもがいると映画館に行きづらいという多くの家族の悩みを、映画館ではなく河川敷や公園で上映することで解決しています。

他にも、深刻化する空き家問題を解決に導く取り組みとして、建物に感謝を伝えるお別れ会「棟下式(むねおろしき)」を行ったり。

こうしたさまざまな取り組みの中で、唐品さんが大切にしていることを教えていただきました。

1. 関わる余地をつくり、イベントに参加してもらうこと
2. 正しく課題を把握するために、話をしっかりと聞くこと
3. まずは家族や身近な人たちが楽しく、しあわせになれること

唐品さん:面白がるメガネをかけてみれば、見慣れた景色も変わってくると思います。ぜひ皆さんも、面白がるメガネをかけて街に出かけてみてください!

本校生の声

ゆるくて、鋭い。
アイディアがカタチになるプロセスが
参考になりました。

トラスホーム株式会社
代表取締役 古川広毅
さん

私は郡山市内で不動産業を営んでいます。地元を盛り上げていきたいと気持ちを強くする中で、同じ想いを持つ人に出会い、仲間をつくりたいと思い、まちがくには2020年から参加しています。今日の講義を聞いて、「面白がる会」のようにゆるい場をつくりながら、その中で出てきたアイディアを拾い上げ、実現していくプロセスが参考になりました。企画のゆるさと同時に、視点の鋭さがありましたね。一人ではなく、余白をつくり、みんなでカタチにしていくことも、これからの自身の活動で心がけていきたいと思います。